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大阪維新が都構想の代案 広域行政一元化など目指す

「大阪都構想」を推進してきた大阪維新の会が、住民投票での否決を受け2つの代案を提示した。大阪府と大阪市の広域行政を一元化する条例の制定と、区の権限を強める「総合区」制度の導入だ。大阪府・市の「二重行政」の解消などを狙った都構想に近い内容で、住民投票ではなく府議会や市議会の議決で実現できる。僅差の否決から1カ月余り。早くも各党の駆け引きが始まった。

大阪府市の二重行政解消を目指す吉村知事(右から2人目)と松井市長(左手前、11月、大阪市)

「将来のために行政の形をどう変えるかは難しい問題。よく分からないから反対した人が多かったのではないか」。ある維新幹部は悔しさをにじませながら住民投票の敗因を分析する。

都構想は政令指定都市の大阪市を廃止し、現在の市内24区を4つの特別区に再編するのが柱だった。大阪市がもつ大規模な街づくり、港湾や水道といった広域行政を府に一元化し、府域全体の成長を促すほか、子育て支援や教育といった住民に身近な行政は人口60万~75万人の4特別区に任せ、公選の区長がよりきめ細かなサービスを実現するとしていた。

大都市地域特別区設置法に基づく制度で、橋下徹元代表が提唱した維新の看板施策だったが、2015年5月と20年11月に大阪市民を対象に行った住民投票で、いずれも僅差で否決された。

松井一郎大阪市長(維新前代表)と吉村洋文知事(前代表代行、現代表)が次の一手を示したのは2度目の否決から4日後の11月5日だった。

新たに打ち出したのは2つの案だ。1つは府と市で広域行政を一元化する条例の制定。詳細は固まっていないが、都構想で府に移管するとしていた市の427事務の一部について、条例で府に一元化することなどが議論されている。想定しているのは、自治体が別の自治体に事務を委託できることを定めた地方自治法252条。府・市で規約を結び、市が府に委託費を払う形で財源を移す。このほか、広域行政を担う部署を府・市で一体化する条例を定める案もある。

松井氏は「住民投票で大阪市を存続させる判断が下されたが、賛否の割合は1ポイント差だ。二重行政の解消や府・市一体の成長戦略は実行すべきだという意志だ」と主張する。吉村氏とともに府・市の2月議会での条例提案を目指す。

松井氏らが挙げたもう1つの案は、地方自治法改正で16年4月に可能になった「総合区」の設置だ。大阪市を政令市として存続させたまま、区長の権限を強化し、住民サービスの拡充を図る。15年5月の前回の住民投票で、都構想に反対していた公明党が主張していた。当時市長だった橋下氏は都構想否決を受けて総合区の検討を指示。その後、現在の24行政区を8総合区に再編する案が議論された。

総合区を提唱した公明が都構想賛成に転じたことで議論は立ち消えになったが、松井氏は「公明と(当時の)市長がまとめ上げた非常にいい案だ。これで都市内分権を進めたい」とし、設置内容を盛り込んだ条例案を2月市議会に提案する構えだ。

維新は次の看板政策を掲げて党の求心力を保つ狙いがある。11月21日に吉村氏が新代表に就任し、幹事長や政調会長も「吉村世代」と呼ばれる若手でそろえた。党内に都構想の3度目の挑戦を望む声もある中、早期に「ポスト都構想」の戦略を示さなければ結束が弱まる懸念がある。

一方、他党には波紋が広がる。都構想に反対してきた自民党のある市議は「大きな権限を持っている政令市の大阪市を守るというのが、住民投票で示された民意だ」と主張し、広域一元化条例で市の権限と財源が奪われることに反発する。

一方で総合区については、全面的に反対しにくい状況だ。自民は区を統合する「合区」には反対だが、24行政区をそのまま総合区に格上げする案をかつて主張していた。党内には政令市より権限がある「特別自治市」の実現を探る動きもあるが議論は進んでおらず、維新の代案へのスタンスは定まらない。

公明も戸惑う。昨年春に都構想反対から賛成に転換したことで、国政で連携する自民との関係にひびが入った。次期衆院選に向けて自公の協力関係修復を目指す一方、維新と敵対すれば公明現職のいる衆院小選挙区に維新が対立候補を立ててくるとの懸念があり、難しい判断を迫られる。

■大都市制度なお模索

道府県と政令指定都市の「二重行政」の解消は国内の大都市に共通する課題だ。全国20の政令市でつくる指定都市市長会は11月、道府県から独立した「特別自治市」の創設を政府に提言。大阪都構想の否決後も、新たな大都市のあり方について議論が続いている。

特別自治市は道府県の全業務を政令市に移し、財源も移譲する。自立した財政基盤を確保し、都市競争力を高めるインフラ整備やまちづくりを推進する狙いだ。広域業務を大阪府に集約しようとする大阪維新の会とは正反対の手法だが、二重行政を解消して効率を高める狙いは共通する。

特別自治市の設置には法整備が必要となる。指定都市市長会は新たに設置した専門チームで法律の素案を作成し、国に提示する方針。各政令市で大都市制度を所管する部局を集めた作業部会を設置し、詳細を詰める。2021年5月に中間報告をまとめる予定だ。

一方、特別自治市とは異なる大都市制度を模索する動きもある。静岡県の川勝平太知事は政令市である静岡市を廃止し、権限の強い特別区を置く「静岡型県都構想」を唱える。

ただ、大都市地域特別区設置法ではこうした自治体再編の要件を、政令市単独または隣接自治体と合わせた人口が200万人以上の地域と規定。静岡市はその要件を満たしていない。川勝知事は大阪都構想否決後に出したコメントで、同法の要件削除を国に働きかける意向を示している。

(大阪社会部 佐野敦子)

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