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欧米、ワクチン供給網の整備急ぐ 冷凍設備や配送実験

<訂正>12月4日5時48分に公開した「欧米、ワクチン供給網の整備急ぐ 冷凍設備や配送実験」の記事中、「国際児童基金」とあったのは「国連児童基金」の誤りでした。
コロナワクチンの輸送に向けた準備が進んでいる(ベルギーのブリュッセル国際空港)=ロイター

【ロンドン=佐竹実、ニューヨーク=野村優子】新型コロナウイルスワクチンの実用化が近づくなか、供給網を整備する動きが急速に広がっている。英国では7日、米国では12月中旬にもワクチンの接種が始まる見通し。徹底した低温管理が求められる輸送・管理体制への懸念は多く、円滑な供給に向けた体制構築が急がれる。

英国、1500カ所でワクチン受け入れ準備

米製薬大手ファイザーと独ビオンテックのワクチンを世界で初めて承認した英国は、7日にも医療機関などでの接種を始める。英政府は同ワクチンを4千万回分確保しており、80万回分が数日中に到着する見通しだ。

ベルギーにあるファイザーの工場で生産されたワクチンは、飛行機やトラックで運ばれる。特に温度管理の条件が厳しいファイザー製ワクチンは、専用の冷凍ボックスに入れて配送する。ボックスは1千~5千回分のワクチンをマイナス70度で10日間まで保管でき、全地球測位システム(GPS)で追跡できる。英国内の配送センターで2~8度の冷蔵庫に移してからは5日以内に使用する必要がある。

ハンコック保健相によると、50カ所の病院でワクチンの受け入れ体制が整った。政府はワクチン接種センターを立ち上げているほか、地域の診療所なども接種場所になるとみられる。ビオンテックによると、英国では1500カ所以上で受け入れ準備ができている。

米国、配送実験や冷凍設備の確保も

米国では、ファイザーとビオンテックのワクチンが早ければ12月10日に承認され、中旬にも接種が始まる見通しだ。米国は追加で購入できる分も含めると、最大26億回分のワクチンを確保している。米運輸省は「迅速な大量輸送に向けた準備が整った」と発表している。

ファイザーは供給開始に向けて、南部テキサス州や北東部ロードアイランド州など4州で配送実験をした。報道によると、生理食塩水の入ったワクチン容器を発送し、実際の供給前に問題点などを洗い出して修正した。米国では物流大手UPSやフェデックスと組み、ミシガン州のファイザー工場から全米にワクチンを配送する。

ワクチンを運ぶ物流・航空各社も「コールドチェーン」(低温物流)の拡充を進める。UPSは、不足が懸念されていたドライアイスを1時間あたり1200ポンド(540キロ)分生産できる体制を整えた。保管や配送に活用し、病院や診療所などにも提供できるようにする。マイナス20~80度に対応する冷凍庫も確保した。フェデックスは5000以上の配送施設や8万の車両、670機の飛行機などを用意し、配送支援する。

航空大手では米連邦航空局(FAA)の支援のもと、ユナイテッド航空がファイザー工場のあるベルギーからイリノイ州シカゴにワクチンを大量輸送したと報道された。アメリカン航空も南部フロリダ州から南米への試験飛行をしている。ロイター通信によると、航空貨物団体などの調査でファイザー製ワクチンの超低温輸送に対応できるのは全体の15%にとどまり、輸送手段の不足懸念もある。

企業でも従業員のワクチン接種に向けて冷凍設備を確保する動きがでている。米メディアによると、フォード・モーターはファイザー製ワクチンを保管できる超低温冷凍庫を12台発注した。こうした特殊な冷凍庫は、1台5千~1万5千ドルとみられており、一部で在庫不足が生じている。

ワクチン供給網を狙ったサイバー攻撃の脅威も高まっている。IBMのセキュリティー部門は3日、ワクチンを配布する企業や政府を標的にしたサイバー攻撃の動きがあると警告した。

欧州連合(EU)、加盟国向けに一括購入

欧州連合(EU)はファイザーのワクチン3億回分を含め、最大約19億回分を確保した。EUで一括購入し、加盟27カ国の人口に応じて域内に振り分ける。イタリアのスペランツァ保健相は約2億200万回分を来年3月までに確保できるとしている。欧州医薬品庁(EMA)はファイザーのワクチンについて29日の会議で承認を決める予定で、実際の接種は来年以降になりそうだ。

欧州各国へはビオンテックのドイツの工場から運ばれる。フランクフルト国際空港を拠点とするルフトハンザによると、同空港には「世界で有数の超低温設備がある」という。同社は貨物専用機や、稼働率の低い旅客機の空いたスペースも使うとしている。

途上国、コールドチェーン整備が課題に

途上国では低温物流の整備に加え、ワクチンの確保が課題に(ブルキナファソの診療所)=AP

発展途上国ではコールドチェーンの整備だけでなく、ワクチンそのものをどう確保するかという課題がある。国際的なワクチン買い取りの枠組み「COVAX(コバックス)」が、計39億人の人口を抱える92カ国の低・中所得国向けに確保しているのはわずか7億回分だ。

途上国へのワクチン輸送については、国連児童基金(ユニセフ)などの機関が世界の物流・航空会社と協議を始めた。92カ国向けに、2021年に20億回分のワクチンを輸送する方法を検討している。もっとも、米国立アレルギー感染症研究所ファウチ所長は「厳しい温度管理は英国や米国では可能だが、発展途上国ではずっと難しくなる」と指摘している。

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