銅と日本株、2021年世界の投資マネーが注目
12月に入り、ウォール街でも2021年予測が出回る季節になった。未曽有の規模の対コロナ経済支援政策が生んだ巨額の過剰流動性の受け皿について様々な議論が交わされる。その中で、選択肢として興味深いのは、銅相場と日本株の名前が挙がることだ。
日本株については、既に本欄で2回にわたり指摘した。(11月26日付「NY株3万ドルの追い風、海外勢、日本株買い裾野拡大」、12月2日付「世界株高、目立つ日本株、欧米で高評価」)
そこで、きょうは「銅相場」を吟味してみたい。国際指標であるロンドン金属取引所(LME)の銅3カ月先物価格は今週に入り1トン=7600ドルを超えている。11月25日時点では7300ドルの価格水準だったので、直近での急騰が目立つ。振り返れば、今年3月には4600ドル台まで下がっていた。それが、例えば、ゴールドマン・サックスの最新2021年予測では年平均価格が8625ドル。2022年には9175ドル。さらに、2022年前半までには史上最高値の1万170ドル(2011年)を突破の「確率が高い」とまで明記されている。
プロの間では、銅金比価が世界の景況感を測る物差しとして注目されるが、金価格は既に今年史上最高値を突破した後、現在は調整局面入りの状況だ。1トロイオンス=2000ドル突破後、1800ドルの大台攻防という局面にある。そこで、相対的に銅の上げ余地にヘッジファンドなど投機マネーの食指が動くのだ。
そもそも銅は金と異なり典型的な産業用金属だ。中国が最大の需要国でもあり、価格動向が、世界の景気動向を診断する「ドクター・コッパー」と呼ばれる。その中国は最新の11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)も好調で経済の回復が株式市場でも注目されてきた。さらに、先月以来、コロナワクチン開発進展による経済回復期待の波にも乗っている。加えて、外為市場で顕著なドル安基調もコモディティーとしての銅には追い風だ。ドルの総合的な強さを示すドルインデックスは今年前半に100超えの局面もあったが、今や91割れ寸前まで急落している。イエレン財務長官指名による、「ハト派」=ドル安の連想も市場内では意識されている。
中長期的にも銅需要増が見込まれる。電気自動車(EV)はガソリン車に比し2倍超の銅を使うのだ。そこにグリーンエネルギー政策重視のバイデン政権誕生。このタイミングを計ったかのようなゴールドマン・サックスの強気見通し発表である。
客観的に見れば、既に価格に織り込まれた材料も多く、相場が過熱化の兆候も見られる。高値圏では増産も予想される。それでも、有り余る投機マネーの視点では、「まだまだ行ける」「ダウ3万突破でも株式市場は更なる上値追いを見込んでいる」と読み、買い継続の姿勢だ。利益確定売りの局面を押し目買いのチャンスと虎視眈々(たんたん)狙う投機筋の読みも透ける。
日本株は出遅れ感漂う割安銘柄の循環物色。銅は買いのモメンタムに乗る動き。
貪欲な過剰流動性マネーは臨機応変に市場の潮流を捉えて動く。

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