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SlackをSalesforceが買収 新興クラウド勢の転機に

独立維持か大手の傘下か コロナ後見据え再編も

スラックがセールスフォースの買収を受け入れたことは、単一アプリを磨いてきた他の企業の戦略にも影響を与えそうだ

【シリコンバレー=佐藤浩実】ビジネスチャット大手の米スラック・テクノロジーズは1日、米セールスフォース・ドットコムによる買収に合意した。新型コロナウイルス下で激しくなった競争が、在宅勤務を支える新興テック企業の代表格だったスラックの決断を後押しした。ワクチン開発が進み「コロナ後」が近づくなか、さらなる再編が起こる可能性もある。

セールスフォースが現金と株式交換を組み合わせ、277億ドル(約2兆8900億円)でスラック株を取得する。2021年7月までに手続きを終える計画で、スラックはセールスフォースの1部門となる。1日に会見したセールスフォースのマーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)は「スラックは1世代に1つの企業。ゲームチェンジャーになる」と息巻いた。

大型買収の呼び水となったのは、コロナによって加速した世界の企業のデジタル変革だ。

「5年かけて徐々に進むと思っていた変化が、何年もすっ飛ばして同時に起きている」。スラックのスチュワート・バターフィールドCEOは3月、日本経済新聞の取材でこう話した。コロナ感染対策で在宅勤務を迫られ、スラックに「仮想オフィス」の役割を託す企業が増えていた。1日に発表した20年2~10月の売上高は6億5200万ドルと、前年同期と比べて45%増えた。

スラックは1日、セールスフォースによる買収を受け入れることで合意した

ただ、コロナは市場を急速に広げただけではない。競争環境も変わった。米フォレスターリサーチのアート・シュラー氏は「企業に必要なサービスをまとめて提供できるマイクロソフトの競争力が際立った」と分析する。

企業はマイクロソフトの文書ソフトなどを契約していれば同社のビジネスチャット「チームズ」を無料で使える。チームズはスラックを大きく上回るペースで利用を伸ばした。在宅関連のサービスを手掛ける各社がそれぞれ機能を強化し、競合する場面も増えた。

コロナ下ではビデオ会議の米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ、電子署名の米ドキュサインなど「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス、サース)」と呼ばれる多くの新興クラウド企業が社会の変化の波に乗った。SaaSは特定サービスに強い「ホリゾンタル」と、業界に特化しそれぞれに固有のアナログな慣習をテックで解決しようとする「バーティカル」があり、コロナ下ではともに好調だ。

米ベンチャーキャピタル(VC)のベッセマー・ベンチャー・パートナーズによれば、クラウド企業54社の直近の四半期の売上高は前年同期を39%上回る。ベッセマーが54社の株価から算出したインデックスは年初来から90%近く上昇している。ただ、コロナの感染初期と比べ成長率にムラが出てきているのも事実だ。

産業界は「コロナ後」も見据えて動き出している。例えば米国では、12月中にも米ファイザーが開発したワクチンの接種が始まる見通しだ。一般に広く行き渡るには時間を要するものの、コロナが追い風になった企業の成長が鈍るとの懸念は絶えない。

スラックのバターフィールドCEOは「顧客に愛されるサービスならば小さくても大企業と戦える」と公言してきた。同社は上場後もCEOを含めた経営陣が議決権の過半を握り、独立を維持することはできた。だがコロナワクチンの明かりが差してきたタイミングで、セールスフォースからの巨額のオファーを受け入れた。

「生物が進化するように環境に機敏に対応し、進路を変えていく必要がある」。バターフィールド氏は3月の取材でこうも話していた。巨大テック企業はさらなる買収で機能の拡充に動く。同氏は結局、大企業の傘下で進化する道を選んだ。

今回のスラックの決断は、同社のように単一のアプリケーションを磨いてきた他社の戦略にも影響を及ぼしそうだ。コロナ後を見据え、SaaSをめぐるドミノ式の再編が起きる可能性もある。

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