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バイデン体制 経済チーム、格差に挑む

【ワシントン=河浪武史】米大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン前副大統領は11月30日、財務長官にイエレン前米連邦準備理事会(FRB)議長を充てる経済チームの人事案を発表した。主要ポストは女性やマイノリティーを起用し、格差是正を目指す象徴的な布陣とした。税財政は「大きな政府」へ傾きそうだが、議会との調整など難路が待ち受ける。

「バイデン氏は素晴らしい選択をした」。グリーンスパン元FRB議長は日本経済新聞にコメントした。共和党のブッシュ政権(第43代)で財務長官を務めたヘンリー・ポールソン氏も「イエレン氏は経験も才能も信用力もある」と評価する。

バイデン陣営は30日、米行政管理予算局(OMB)局長に、左派系シンクタンク「アメリカ進歩センター」のニーラ・タンデン所長、米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長に米プリンストン大のセシリア・ラウズ氏を充てる人事案も発表。バイデン氏は「新チームは早々に経済対策を用意する」と表明した。

人選にはリベラル系の登用を求める急進左派への配慮がにじむ。OMBは歳出入の基本計画を策定するが、タンデン氏はバーニー・サンダース上院議員ら急進左派が主張する国民皆保険や、再生エネルギーへの大規模投資計画「グリーン・ニューディール」などを支持してきた。イエレン氏とラウズ氏は労働経済学の専門家で、経済チームは弱者対策を重視するリベラル色を強めている。

真っ先に問われるのがワシントンでの政治手腕だ。就任早々の経済対策をめざすバイデン体制だが、上下両院は多数党がそれぞれ異なる「ねじれ議会」になりそうだ。イエレン氏は「人柄はいいが、政治的な駆け引きと縁遠い人物」(FRB関係者)。老練なマコネル院内総務ら共和重鎮との調整能力は未知数だ。

米経済は公的支援が相次ぎ失効する「財政の崖」に直面する。JPモルガン・チェースは2021年1~3月期に米経済成長率が再びマイナス成長に陥る可能性があると警告。大型経済対策で景気懸念を払拭できなければ、バイデン体制はスタートからつまずく。

前FRB議長のイエレン氏を財務長官に起用するのは、経済構造改革へFRBとの連携が不可欠だからだ。バイデン氏は雇用対策として大型公共投資を公約するが、政府債務は27兆ドルと既に過去最悪だ。ひとたび金利が上昇すれば債務膨張が止まらなくなるリスクもあり、FRBの低金利政策の維持が欠かせない。

主要中銀首脳OBは「イエレン氏の手腕が生かせるのは、国際的な税制改革や金融システム改革だ」と指摘する。米国は内政の最終決定権の多くが連邦議会が握り、財務長官の専権事項はむしろ国際金融・税制にある。

バイデン氏は大型公共投資などの財源として、法人税率の引き上げを主張するが、国家間の税率下げ競争がその障壁となる。主要国は経済協力開発機構(OECD)を中心に税逃れ対策など国際税制改革を議論する。イエレン氏が主導役になれば、税制改革で格差是正を目指す「バイデノミクス」の下地は整う。

財務長官は対中貿易協議や為替政策で前面に立つ役回りも担うが、イエレン氏の手腕は不明だ。

FRB議長時代には人民元ショックに直面し、中国の為替管理の不透明さと世界経済へのインパクトを痛感した。国際金融システムを安定させるため、中国に透明性の向上などを強く求めていく公算が大きい。

イエレン氏は日米欧や新興国の20カ国・地域(G20)などで金融緩和を自国の通貨安誘導に使わないという国際協調に尽力した。中国が貿易に有利になるように意図的に人民元を切り下げているとして「為替操作国」に一時指定したトランプ政権とは対照的で、通貨政策でも対中姿勢が変わりそうだ。

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