世界経済、21年末までにコロナ前水準回復 OECD予測
【パリ=白石透冴】経済協力開発機構(OECD)は1日、世界の経済規模が中国の成長回復がけん引する形で「2021年末までに新型コロナウイルス禍前の水準に戻る」との経済見通しを発表した。感染再拡大が成長率を押し下げるリスクは消えておらず、金融財政政策による下支えや、経済制限を最小限に抑える感染対策の継続などを各国・地域に求めた。
OECDは年4回、経済見通しを公表している。今回の報告書では「コロナ禍が始まって以来、初めて明るい未来に向けた希望がある」などと指摘。ワクチンなどの研究が進んでいるほか、各国の雇用や企業支援策で経済が回復しやすい状態を保っていると説明した。

世界の実質経済成長率は20年に4.2%低下するが、21年に4.2%伸びるとみている。9月の前回予想より20年は0.3ポイント上方修正、21年は0.8ポイント下方修正した。見通し通りに推移すれば、21年10~12月期の世界の国内総生産(GDP)の水準がコロナ禍前の19年10~12月期の水準に戻ると指摘した。
ただ経済回復のペースは国・地域ごとにまだら模様だとみている。けん引役は中国で、21年の世界経済成長の3分の1以上に寄与すると予測。「国の大部分で新型コロナを抑え込んでいる」ほか、マスクや在宅勤務関連商品の輸出が好調となっていることを理由に挙げた。中国の20年の成長率は1.8%とプラス成長を維持。21年は8.0%、22年は4.9%の成長率を見込む。
日本のGDPは20年に5.3%減少した後、21年に2.3%、22年に1.5%のプラス成長となる見通しだ。輸出が戻りつつあるほか、東京五輪が無事に開催されれば消費を押し上げるためだ。一方で企業の投資は弱含むとみている。
OECDは日本に対して「生産性や持続性を高めるための構造改革を進めるべきだ」とも指摘した。勤務体系を柔軟にしたり、デジタル化をさらに進めたりすることを提案した。
深刻なコロナ禍が続く米国と欧州による世界の経済成長への寄与度は相対的に小さくなる。米国の成長率は20年にマイナス3.7%となった後、21年は3.2%、22年は3.5%のプラス成長となる予想だ。