半導体市場、21年に最大に 5Gやデータセンター向け活況
半導体市場の回復が鮮明になってきた。主要メーカーで構成する業界団体、世界半導体市場統計(WSTS)は2021年の半導体市場規模が前年比8.4%増の4694億ドル(約48兆円)と、過去最大になると1日に発表。高速通信規格「5G」の普及や自動車産業の回復が追い風になる。新型コロナウイルス禍でもデータセンター向けなどで活況が続いている。

これまでの最高は18年の4687億ドルで、WSTSが20年6月に公表した21年予想ではこれを下回っていた。5Gの普及で、半導体やセンサーの需要が高まることなどから、今回、6月時点の予想から171億ドル上積みした。コロナで在宅勤務やオンライン授業が広がり、パソコンやデータセンター関連の投資も期待できるという。
21年は製品別ではメモリーが前年比13%増とけん引する。足元ではスマートフォンやデータセンター向けに半導体メモリーの需要も増え、メーカーが増産に動いている。
韓国サムスン電子はメモリー市況の回復を受け、20年7~9月期の営業利益が前年同期に比べて58%増えた。韓国や中国の工場で増産に向けて巨額投資を決めている。国内でもキオクシア(旧東芝メモリ)がフラッシュメモリー増産に向け、計1兆円を投じて四日市市に新工場を建設すると10月に発表した。
CPU(中央演算処理装置)などの「ロジック半導体」も21年に7%増える見通しだ。5Gの普及をきっかけに人工知能(AI)の利用が広がっているためだ。より大量のデータを処理できる半導体の需要が高まっており、米インテルは21年に回路線幅が10ナノ(ナノは10億分の1)メートルの技術を使ったパソコン向けCPUを市場投入する。
半導体市場は、19年にはデータセンター向け投資が一服し、前年を12%下回った。20年は回復基調にあったがコロナの影響で6月段階では先行きが不透明だった。20年の半導体市場は、コロナによる世界経済の低迷の影響は受けるが、5G需要を受けて前年比5.1%増の4331億ドルになる見込みだ。6月時点の予想から71億ドル上振れる。
半導体企業に対する期待も高まっている。主な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は年初から4割以上上昇し、最高値を更新している。
長期的には安定した拡大が期待される半導体市場だが、足元では新型コロナが再び拡大する兆しもでており、世界景気の落ち込みを懸念する声が出ている。米中貿易摩擦の動向次第で投資を控える企業がでる可能性もあり、先行きにはなお慎重な見方も残っている。
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