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「何の会社?」 あなたの知る日立・東芝はもういない

日立製作所はかつて「Wooo(ウー)」ブランドのテレビを手掛けていた(写真:ロイター)
日経ビジネス電子版

12月を迎えいよいよ本格化するボーナス商戦。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もありネット通販が主戦場となりつつあるが、家電量販店も販売増を狙う。

コロナ禍での「巣ごもり需要」が期待されるテレビ売り場をのぞくと、ソニーパナソニックなど国内大手ブランドの4Kテレビが並ぶ中、日立製作所のテレビはどこにも見当たらない。

それもそのはず。日立は2018年10月に「Wooo(ウー)」ブランドのテレビの国内販売を終了したからだ。かつては日立製のテレビに割り当てていた販売スペースを代わりに埋めているのは韓国や中国のメーカーのテレビ。日立グループの系列販売店である日立チェーンストールが現在取り扱うのは、ソニーブランドのテレビだ。

同じテレビ売り場には、東芝ブランドのテレビ「レグザ」が数多く並んでいる。ただ、手掛けるのは東芝ではなく東芝映像ソリューション(川崎市)。中国電機大手の海信集団(ハイセンス)が18年に東芝から買収して子会社にした。現在の東芝の出資比率はわずか5%にとどまる。

残った消費者向け製品はわずか

テレビだけではない。家電量販店で日立や東芝が手掛ける商品を見る機会はどんどん減っている。

かつて東芝製品の代表格だったパソコンもその1つだ。東芝は1985年に世界初のラップトップ型パソコンを送り出し、89年には「パソコンの父」とも呼ばれるアラン・ケイ氏が提唱した「ダイナブック」をブランド名に冠したノートパソコンを発売したことで知られる。90年代後半はノートパソコンで世界シェア首位を誇ったが、2018年10月に同事業の株式の8割をシャープに売却、今年8月には残りの株式も手放した。現在はシャープの完全子会社、ダイナブック(東京・江東)として運営されている。

東芝のデジタル家電の代名詞だったパソコン「ダイナブック」はシャープに売却(写真:ロイター)

冷蔵庫や洗濯機、炊飯器、エアコンといった白物家電売り場には東芝と日立の製品が数多く陳列されている。だが、東芝ブランドの白物家電を手掛ける東芝ライフスタイル(川崎市)は、中国家電大手の美的集団が16年に買収している。日立が販売するエアコンも、米空調機器大手のジョンソンコントロールズと15年に設立した空調事業の合弁会社、ジョンソンコントロールズ日立空調(東京・港)が製造したものだ。同社に対する日立グループの出資比率は4割と過半に満たない。

エアコンを除く日立の白物家電は、100%子会社の日立グローバルライフソリューションズ(東京・港)が開発や製造を手掛けている。ただし、白物家電を含む「生活・エコシステム事業」は20年3月期に収益性が改善したものの、調整後営業利益率は4.9%。「22年3月期に調整後営業利益率10%以上」という目標を掲げる日立が「白物家電事業を手放してもおかしくない」(証券会社幹部)との観測がくすぶる。

「総合電機」の看板を下ろす

かつては家電に加えて電力や鉄道などの重電、半導体や部品・材料までの幅広い商品群を手掛け、「総合電機」の雄として互いをライバルとして意識していた日立と東芝。そんな日本企業の代表格ともいえる両社が進めてきた事業ポートフォリオの整理は、家電やパソコンなどの消費者向け商品だけではなく、企業向け商品にまで及んでいる。

日立は00年代までにDRAMとシステムLSI(大規模集積回路)という半導体事業を他の電機大手と統合させることを決断。10年以降はハードディスク駆動装置(HDD)、中小型液晶パネル、半導体製造装置、電動工具、カーナビ、化成品、画像診断システムといった数多くの事業を売却した。「重電」の象徴といえる火力発電や海外での原子力発電事業からの撤退まで決めた。2009年に22社あった上場子会社の数は11月30日時点で日立建機日立金属のみ。この2社についても「売却は既定路線」(大手証券の関係者)とみられており、水面下で売却交渉が進む。

一方の東芝も、15年の不正会計発覚をきっかけとする経営危機で多くの事業の売却を決断した。先に紹介した家電やパソコンのほか、成長の柱に掲げてきた医療機器や、主力事業だった半導体メモリーを手放さざるを得なかった。海外の原発事業から撤退したのに加えて、今年11月には石炭火力発電所の新設事業からの撤退も発表した。

東芝は不正会計を発端とする経営危機で虎の子だった半導体メモリー事業を売却した

多くの人が思い描く「かつての日立、かつての東芝」はもういない。「総合電機」の看板を下ろし、別々の道を進み始めている。

足元の業績は堅調だ。日立の20年3月期の連結業績は、売上高は8兆7672億円、調整後営業利益は6618億円。新型コロナウイルスの影響で営業利益率は前年をやや下回る7.5%になったが、上場子会社を除けば8.5%に達した。東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は「実力がついてきた」と話す。日立に比べて改革が遅れた東芝は、同じ期の連結業績が売上高3兆3898億円、営業利益1304億円だった。営業利益率は3.8%にとどまるが、「東芝の歴史から見れば高水準だ」と車谷暢昭社長兼最高経営責任者(CEO)は胸を張る。

今目指すのは、日立は「社会イノベーション事業でのグローバルリーダー」(東原社長)、東芝は「インフラサービスカンパニー」(車谷社長)だという。2社は「失われた30年」で何を考え、どのような戦略で動いてきたのか。本当に成長軌道に乗れているのか。今後も、変化を続ける2社の実像に迫っていく。

(日経ビジネス 佐伯真也)

[日経ビジネス電子版2020年12月1日の記事を再構成]

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