「埼玉の逆襲」 所沢の遊園地、球場がクールに大変身

日経トレンディと日経クロストレンドが発表した「2021年ヒット予測ランキング」の12位に「西武園ゆうえんち」と「ところざわサクラタウン」が選ばれた。「東京のベッドタウン」として発展を遂げた埼玉県所沢市。この街が、暮らす、働く、学ぶ、遊ぶ――そのすべてを備えた「リビングタウン」に生まれ変わる象徴のようだ。
「昭和レトロ」が若者を引き寄せる
所沢を本拠地とする西武グループが総力を挙げて開発したプロジェクトが収穫期を迎える。
目玉は約100億円を投じて2021年春に生まれ変わる西武園ゆうえんちだ。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を再建した森岡毅氏率いる刀(大阪市)と組み、1960年代の古きよき日本の街並みを再現する。ゲートをくぐれば路面電車があり、活気に満ちた商店街が目に飛び込んでくる。おせっかいなほど親切な店主がライブパフォーマンスを繰り広げ、商店街の先には大観覧車やメリーゴーラウンド、回転空中ブランコなど、懐かしの遊具が集まる。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督とつくり上げた、大型ライドアトラクションもお目見えする。
60年代といえば日本経済が右肩上がりで成長し、希望にあふれていた時代。今は当時より格段に便利になったが、情報に追われ、心休まるときがない。人間関係も希薄になった。だからこそ森岡氏は「心あたたまる幸福感に包まれる世界」をつくろうと思い立った。コロナ禍で、人々は温かい心の触れ合いを求めている。「昭和レトロ」な空間は若者をも所沢へ誘う原動力となる。
商業施設やミュージアムなどが続々開業
西武グループは20年9月、所沢駅東口の商業施設「グランエミオ所沢」をグランドオープン。21年3月には埼玉西武ライオンズの本拠地メットライフドームがボールパークに装いを変える。
東所沢駅周辺では20年11月、出版大手のKADOKAWAが「ところざわサクラタウン」を開業した。建築家隈研吾氏が手掛けた「角川武蔵野ミュージアム」は外観が巨大な石の塊そのもの。高さ約8メートルの「本棚劇場」など圧巻の光景が内部に広がる。この他、アニメホテルや体験型の書店、神社などが集うクールジャパンの一大集積地となる。
長きにわたり不当に「ダサい」と言われ続けてきた埼玉だが、所沢の変貌ぶりは、もはや壮観としか言いようがない。「クール埼玉」の逆襲が始まる。

(1)西武園ゆうえんち

(2)グランエミオ所沢

(3)メットライフドーム

(4)ところざわサクラタウン

(日経クロストレンド 酒井大輔)
[日経トレンディ2020年12月号の記事を再構成]
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