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いま問い直すスポーツの価値 選手・指導者ら対談

対談に参加した柔道男子日本代表の井上康生監督(右)=10月、東京都新宿区

新型コロナウイルスの感染拡大でスポーツが制約を受けるなか、その価値をトップアスリートや指導者らの対談を通じて再考する取り組みが進んでいる。「スラムダンク勝利学」などの著書があるスポーツドクターの辻秀一氏と日本ラクロス協会の安西渉理事が主宰し、柔道男子日本代表の井上康生監督やバレーボール女子日本代表の荒木絵里香らが参画。「スポーツと武道」「スポーツと子育て」などのテーマを通じてスポーツと社会のつながりを掘り下げる。

企画はオンサイトとオンライン形式を併用して7月から始まり、全10回程度を予定。毎回ゲストを招いてそれぞれの専門的なテーマについて語り合い、社会のなかでのスポーツの存在意義をひもとく。「コロナの状況下でスポーツは不要不急のものとされがちだが、日常生活の様々な機能と結びついている価値の輪郭のようなものを浮かび上がらせたい」と安西氏はその狙いを話す。

社会との接点意識、ビジネスと共通点…

第1回は5月に米国プロサッカーリーグ挑戦のため渡米(その後スウェーデンのチームに期限付き移籍)したサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」の籾木結花が登場した。白人警官による黒人への暴行・殺害を引き金に広がった抗議活動「ブラック・ライブズ・マター」に対する考え方を、チームメートとゲーム形式での問答を通じて共有したことなどを紹介。スポーツを通して社会の問題に出合い、問題提起のきっかけになることがスポーツの価値の一つとの考えを話した。

企業などにリーダー育成トレーニングのプログラムを提供する「Teambox」の代表取締役で元早大ラグビー部監督の中竹竜二氏は第3回に参加。組織には文化が重要だと主張した。一方的に「答え」を出すのではなく、適切な「問い」を立てられる指導者が不可欠で、スポーツでも組織文化を重んじ、進化させたチームが成果を出し始めていると説明。組織文化を専門的に手掛ける「CCO(チーフ・カルチャー・オフィサー)」の役職を設置する企業が増えていることも紹介した。

中竹氏は、スポーツにはレンズとして世界を見られる「汎用性の高い道具」としての価値があると表現。スポーツとビジネスは価値基準を設定した上でPDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを回しながら成長し、達成を目指すという点で構造が同じであり、成功している企業は「練習」に当たるスキルを磨く時間と「試合」に相当する勝負をかける場を明確に分けているとの考えも披露した。

「五輪は通過点。その先を豊かに」

「スポーツと武道」をテーマに10月下旬に対談した柔道の井上氏は、日本代表合宿で自衛隊での体験訓練など様々な取り組みをしていることを紹介。代表では茶道や陶芸など日本文化に触れ、人間力を高める取り組みも行っており、男子の6階級で決まっている東京五輪代表には「みんなは努力に努力を重ね、代表に選ばれた。五輪を戦っていくなかで結果はどうなるか分からないけれど、そのプロセスが誇れる人間になってもらいたい」と伝えていることを紹介した。井上氏はスポーツと武道の共通点として、プロセスで学んだことを社会に還元していくことが存在意義であると強調。「選手にとって五輪はゴールではなく通過点。金メダルを取ったらすべてではなく、それが一つの手段としてその先が一層豊かになっていくとの考えが重要だ」などと話した。

対談ではこのほか、プロバスケットボールBリーグ・レバンガ北海道の"レジェンド"で昨季引退した同社社長の折茂武彦氏が「スポーツとコミュニティー」、栗田大輔・明大サッカー部監督が「学生スポーツのあり方」など、競技面にとどまらない社会との接点について考え方を語った。対談内容は大学生がまとめ、ウェブ上(https://note.com/value_of_sports)で掲載している。

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