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EU、洋上風力の規模25倍 官民で100兆円投資

50年ゼロ実現に相次ぎ対策

EUは洋上風力発電を拡大する(デンマーク)=ロイター

【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)が2050年に域内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標実現に向けて動き出した。洋上風力発電の規模を50年に現状の25倍にするのに加え、電気自動車(EV)用の電池増産や建物の省エネも進める。「50年ゼロ」は日本など120以上の国・地域が表明、中国は60年までの達成を目指す。先行するEUは環境・エネルギー分野で主導権を握り、産業競争力を高める。

国際業界団体、世界風力会議(GWEC)の予測では、洋上風力の発電能力は30年までに19年の約8倍にあたる2億3400万キロワットに増える。日中韓などのアジアと欧州がけん引役だ。

GWECによると、19年の中国の洋上風力発電能力の新設分は国別で最大となった。日本も経済産業省が7月、30年度までに原発10基に相当する計1千万キロワットの洋上風力を整備する計画を掲げた。

洋上風力は、人が生活する陸上に比べると制限が少なく、多くの国が力を入れ始めた。大型化が可能で多数の機器が設置できるのに加え、住民による反対運動につながりかねない低周波や景観問題が起きにくい。また陸上よりも洋上の方が風況が安定しているとされる。課題だった設置コストも普及に伴って低下しつつある。

EUの欧州委員会が19日公表した風力を中心とする洋上の再生可能エネルギー戦略によると、洋上風力発電の発電能力を現状の1200万キロワットから30年に6千万キロワット、50年に3億キロワットに拡大する。潮力や波力発電も推進する。ティメルマンス上級副委員長は声明で「クリーンエネルギーや雇用増、持続可能な成長、国際競争力に結びつける重要な機会だ」と力説した。

実現に必要な投資額は50年までに官民で8千億ユーロ(約99兆円)にのぼる。新型コロナウイルスの経済対策である復興基金や欧州投資銀行(EIB)の融資制度を活用し、再生エネに資金が流れるよう後押しする。制度面でも沖合での加盟国間の協力を円滑にしたり、再生エネによる電力が送電網に大量に流れ込んだりしても問題ないよう制度改正を進める。

EUが50年に目指す実質ゼロには電力部門は温暖化ガスが出ない再生エネか原子力に移行する必要がある。国際エネルギー機関(IEA)によると、19年のEUの発電量に占める原子力の比率が27%、再生エネは35%。再生エネによる電力が余れば、海水を電気分解して水素をつくれる。水素は電気と比べて貯蔵しやすく、自動車や発電に使っても排出がないため、次世代エネルギーと期待される。

24日には欧州委のシェフチョビッチ副委員長が講演で25年までに欧州の需要を満たすEV用電池を域内で生産できると明かした。EUでは約500の企業などが集まって設立した「バッテリー連合」などを通じて、15前後の「ギガファクトリー」と呼ばれる大規模電池工場が建設中だ。50年ゼロには欠かせない運輸部門の脱炭素化を進める。

19年12月に就任したフォンデアライエン欧州委員長が最優先課題と掲げたのが環境政策だ。総合対策「欧州グリーンディール」は50年の排出実質ゼロを柱にその実現に向けた対策を掲げた。50年ゼロ実現には今後10年間の取り組みがカギを握るとされ、欧州委が具体化を急いでいる。

10月には既存の建物の省エネ策を公表した。欧州は古い建物が多く、ビル部門はEUの温暖化ガス排出の36%を占める。30年までに3500万棟を改修し、16万人の新規雇用を創出する。水素普及に向けた戦略や、使い捨て社会からの脱却をめざすサーキュラーエコノミー(循環経済)計画もまとめた。

目下、議論が進むのが、50年までの中間点として30年の排出削減目標だ。欧州委は1990年比55%減と、従来の40%から引き上げるよう提案した。12月のEU首脳会議で加盟国で合意したい考えだが、ポーランドなど石炭に依存する国が慎重姿勢を崩していない。

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