会心ジャンプも、最後に悔い SP首位の鍵山

最初の4回転―3回転の連続ジャンプ、そして次の4回転トーループは「練習よりうまくいった。満点に近いジャンプが跳べた」と鍵山。本人の感覚通り、ジャッジの評価も高かった。だが演技への入りが順調すぎたことで、頭の中のスイッチが攻めから守りへと切り替わってしまった。
ミスなく滑りきることを考えすぎるあまり、最後に残ったトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の踏み切りが慎重に。「傾いて、肩の位置がゆがんだ」ために空中で体を回せない。ふわっと抜けた失敗ジャンプとなり、全く加点できなかった。
演技曲の終わった瞬間、天を仰いで頭を抱えた。「本当にめちゃくちゃ悔しくて」。この感情は、手拍子というエールで見守った会場の観衆も共有したくなる思いだったかもしれない。
とはいえ、前半に重ねた会心のジャンプは貯金を蓄えるのに十分なもの。「自分で音楽を感じて、表情を作ったり表現したりすることができた」。ジャンプ以外の要素でも収穫を口にした。
羽生結弦と宇野昌磨という2トップを欠き、いささかさみしい顔ぶれとなった今大会。裏を返せば、これから名前を売り込もうとする若人にとっては地歩を固める好機だろう。今季シニアに転向したばかりの17歳が首位で迎えるフリー。この日得た「守りに入らない」という教訓をさっそく生かせるか。(木村慧)