インド経済、後退局面 7~9月期成長率7・5%減
インド政府は27日、7~9月期の実質成長率が前年同期比7.5%のマイナスだったと発表した。成長率は2四半期連続のマイナスとなり、インド経済は景気後退局面に入ったもようだ。新型コロナウイルスの感染拡大による消費の低迷に加え、建設業や貿易なども振るわなかった。

成長率は四半期ベースの公表を開始した1997年以降で過去最悪だった4~6月期のマイナス23.9%に続き、2四半期連続で落ち込んだ。景気後退の定義は各国で微妙に異なるが、金融市場は「2四半期連続のマイナス」とみなすことが多い。

個人消費は国内総生産(GDP)の6割弱を占めるが、マイナス12%に沈んだ。4~6月期もマイナス27%だった。業種別では、建設、貿易、ホテル、通信、金融、不動産、鉱業などが軒並みマイナスとなった。
日米欧の先進国などは前期比で4~6月期のマイナス成長から7~9月期はプラスに転じたが、インドの低迷は世界の主要国のなかでも傷が深い。
インディア・レーティングス・アンド・リサーチのディベンダラ・パント氏は「コロナ拡大で家計が貯蓄に走り、消費の低迷が響いている」との見解を示す。インドのコロナ感染者は9月に1日あたり9万人強で推移し、足元で累計930万人を超えた。
最近は急激な物価上昇も追い打ちをかけている。
「この1カ月でタマネギやトマトの値段が急速に上がり、家計の負担になっている」。首都ニューデリーの主婦、プリヤ・シャルマさんは嘆く。インドの消費者物価は10月に前年同月より8%近く上がり、なかでも野菜、卵、肉・魚が20%前後も高騰した。
物価上昇はコロナ拡大や天候悪化による供給不全が原因とみられ、インド準備銀行(中銀)が目標の上限とする6%を5カ月連続で上回る。中銀はインフレを加速させる懸念から景気を刺激するための利下げに動けないままだ。インド政府は11月に第3弾の経済対策を打ちだしたが、金融市場では財政出動が少ないことから効果を疑問視する見方がある。
インドは日中韓などの15カ国が15日に署名した東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)に加わらず、モディ首相は地場製造業を強化する新しい方針を示している。国境対立も相まって中国製品を排除し、インドで携帯電話などの生産を増やす企業に補助金を支払うことも決めた。対象は自動車や製薬などの13業種に上るが、国内産業育成には時間がかかる。中銀はインドの20年度の成長率をマイナス9.5%と予測し、持ち直す時期がみえない。
(馬場燃)