大阪の時短要請、初日の街は 2万5千店舗対象

新型コロナウイルスの「第3波」を受けた大阪府の営業時間の短縮要請が27日、始まった。対象エリアとなった大阪市の北区と中央区の飲食店などは予約日時の変更など対応に追われている。自粛ムードが広がりエリア外の店舗でもキャンセルは相次ぐが、国や府・市の協力金の対象にはならず、関係者からは恨み節も聞かれた。
時短要請が始まった27日。仕事帰りに友人と大阪市中央区の繁華街・ミナミの洋食店を訪れた20代の女性会社員は「普段は午後11時ごろまで飲むけれど、今日はさっさと帰ります」と午後9時に1次会で切り上げ、店を後にした。
同店のオーナーは「今日の売り上げは先週金曜日の半分以下。さっそく営業時間短縮の影響が出ている」とため息交じり。「忘年会シーズンの需要が取り込めないのは残念だが、今の感染状況では仕方ない」と話した。
府は12月11日までの15日間、営業時間を午前5時~午後9時までの範囲内とするよう要請。対象は2万5千店に上る。
同店も閉店時間を期間中は前倒しして午後9時に変更した。国の外食需要喚起策「Go To イート」の効果で客足は戻りつつあり、同店だけで15日間で150件近い予約で変更などの対応が必要になる。オーナーは、入っていた予約の変更や確認を求める電話にも追われた。
高級クラブやバーなど2千店以上が集まる夜の社交場、北新地(大阪市北区)。「サロン君屋」のオーナー志田恵子さん(76)は開店を2時間早め午後5時にする検討を始めた。「早い時間から来店できる常連客に案内をしようかと考えている」という。
北新地は通常、午後8時ごろから利用客が増える。「クラブ山名」のオーナー山名和枝さん(85)は「せめて午後10時までだったら良かった」と困惑しつつ、「時短要請が出た状況ではなかなかお客さんも来づらいのでは」と話した。
ただ要請に応じる店ばかりではない。「開店したばかりなのに営業時間を短くするのは難しい」。25日に新規オープンした「焼肉酒場be-eef」(同市中央区)の山本翔大店長は漏らす。
感染対策を徹底した上で通常通り午後11時までの営業を続ける予定だ。国や府・市からは要請に応じた店舗に最大50万円の協力金が支払われる見込みだが、「テナントの礼金、改装費など費用がかさんでいる」と話す。
時短要請のあおりで飲み会などを自粛する動きが広がっている。協力金を受け取れないエリア外の店でもキャンセルが相次ぐ。
中央区と天王寺区を挟んで南北に走る主要道「上町筋」。天王寺区側にある居酒屋「炭火焼鳥・地酒 創味」は、通り1つを隔てただけで協力金の対象にはならない。忘年会の予約は既に昨年の8割減で、時短要請の方針が出た後にはさらに数件のキャンセルが発生した。上西治店長は「街全体の客が減るだろうが、早めに店じまいしても協力金はもらえない」とこぼした。
北区に隣接する福島区のJR福島駅前の飲食店街にも影響は及ぶ。ある居酒屋の男性店長(24)は「最近1週間で忘年会などの予約のうち6割ほどがキャンセルされた」と肩を落とす。「かき入れ時の売り上げが減れば、年を越しても経営は厳しい状況が続く」と話した。