新興企業に不当要求、独禁法抵触も 出資者に警鐘
公正取引委員会は27日、大企業やベンチャーキャピタル(VC)がスタートアップ企業に知財の無償提供など不当な要求をすれば独占禁止法違反にあたる恐れがあるとの報告書をまとめた。技術革新の芽をつまないよう、新興企業と大手が対等に競争したり協力したりできる環境を整える。
公取委は2019年11月からスタートアップ1400社超や出資者などを調査してきた。20年6月に公表した中間報告では、新興企業が大企業と共同研究などで連携する際に営業秘密やノウハウの開示を迫られたり、適切な報酬が支払われなかったりする問題を指摘していた。
今回の報告書は出資関係にある大企業やVCとの契約を主にとりあげた。体力の弱い企業は出資の引きあげを恐れ、不当な要求でも受け入れざるを得ないケースが多いためだ。
出資にあたっては、契約違反などがあった場合に株式の買い戻しを請求できる権利の設定が慣習になっている。公取委は「悪用されている実態があるのではないか」と問題視する。調査では、請求権をたてに脅されて知財の無償譲渡を要求されたなどの訴えがあったという。
経営者個人を対象にした個人保証が設定される場合もある。公取委は創業の意欲がそがれるとして「買い戻しの請求対象から個人を除くことが望ましい」との見解を示した。個人保証の規定は米国など海外ではほとんどみられない。日本政府も中小企業への融資の際には経営者個人への保証を外すよう促してきた。
公取委は「独禁法に違反する恐れのある事例には厳正に対処する」として改善を呼びかける。年内にも、経済産業省と連携してスタートアップと大企業が協力する際の問題事例や手本となる契約書のひな型をまとめた指針を公表する。