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脱東京 何もあきらめない地方移住(IN FOCUS)

おだやかな播磨灘へ秋の夕日が沈んでいく――。「最高だね」。酒本健太郎さん(33)と妻の美有さん(31)は、マンションのベランダでうなずいた。

酒本夫妻は共にソフト開発大手のサイボウズに勤務する。都内のマンションで在宅勤務をしていたが、「東京にいる必要がどんどんなくなっていった」

11月初め、兵庫県明石市へ移住を果たすと、新居はかつての約2倍の広さに。「会議が終わってふっと窓の外を見るだけで気分が和らぐ」と美有さんは笑顔を弾ませる。

移住にあたり、美有さんは大阪の拠点へ転籍したが、健太郎さんは東京のまま。2人ともテレワークが基本で、居住地や所属が変わっても、継続してキャリアを積み重ねられるという。

コロナ禍で場所にとらわれない働き方が進み、地方移住を検討する人が増えている。ふるさと回帰支援センターによると、東京から1時間圏内の自治体では問い合わせが急増。茨城県の窓口では6月から8月までの相談件数が昨年比の約2倍に上った。その過半が40代以下だ。

茶室の縁側でテレワーク体験をする参加者(12日、茨城県大子町)
参加者(奥)に不動産物件などの説明をする町役場の担当者

同県大子町は11月中旬、テレワークを行う世帯を取り込もうと、体験ツアーを開催した。参加した4人はいずれも30代で、3人が都内在住者。町の担当者は「若い世代を呼び込み、人口減少に歯止めをかけたい」

移住の増加には企業側の人事制度の変化と業務改革が背景にある。食品大手のカルビーは7月、実務に支障がなければ、単身赴任を解除する制度を開始した。富士通では柔軟な働き方が浸透し、7月以降約300人が事業所とは異なる地域に移り住んだという。

本業以外の夢を実現する人もいる。都内のベンチャー企業に勤務する小山未紗さん(28)は10月、仙台市で趣味を生かした毛糸店を開業した。遠隔勤務を続けながらの副業が認められ、Uターンを決意した。

平日は午後3時まで勤務し、終業後に毛糸の染色や編み物教室を開く。店舗の営業は原則土日のみ。「コロナ前には想像できなかった生活を送っている。新しいことに挑戦できて新鮮」と充実した表情だ。

「新しいキャリアの可能性が増えた」「やって良かったと思うことが多い」。東京を離れた人たちの言葉に実感がこもる。働き方を巡るパラダイムシフトが起きつつある。

写真・文 中尾悠希、石井理恵

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