マレーシア議会、予算案可決 綱渡りの政権運営変わらず
【シンガポール=中野貴司】マレーシアの連邦議会下院は26日、2021年の予算案を可決した。予算案が否決されればムヒディン政権は退陣を迫られる可能性があったが、ひとまず危機を回避した。ただ、過半数の議席を辛うじて確保する状況は変わっておらず、綱渡りの政権運営が続く。

発声による採決で、下院議長が賛成多数と判断した。野党議員の一部から別の採決方法を求める提案も出されたが、採用されなかった。
3月にナジブ元首相らが属する有力政党と組んで、首相に就任したムヒディン氏は当初から脆弱な政権基盤や与党連合内の勢力争いに悩まされてきた。与党側が7月に下院議長の差し替えの動議を提出した際も、わずか2票差の薄氷の可決だった。ムヒディン氏はマハティール前首相らが求める首相不信任決議案の採決も先送りし続け、過半数割れの事態が表面化するリスクを避けてきた。
ただ、21年1月からの予算執行に関わる予算案の採決は先送りできず、26日に採決をはかった。重要な予算案の否決は内閣不信任に近い意味を持つとされており、否決されれば野党連合から退陣を求められる見通しだった。可決にこぎつけたことで、ムヒディン政権の早期退陣の可能性はひとまず低くなった。国王が国民生活の安定のために、国会議員に予算案への支持を忠告したことも可決を後押しした。
だが、一部の議員の離反で、与党連合が過半数割れに追い込まれる不安定な状況は変わっていない。ムヒディン氏は事態打開のため、解散・総選挙の可能性も探ってきたが、10月以降、国内で新型コロナウイルスの感染が再び拡大しており、当面解散に踏み切るのは難しい状況だ。野党連合を率いるアンワル元副首相は倒閣の機会を引き続き探る考えで、マレーシア政治の混乱が収束するメドはたっていない。