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FRB、資産購入で安全網 コロナ・金利・政治を警戒

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は新型コロナウイルスによる経済危機の早期脱却に向け、量的緩和の拡充の検討に入る。目先には感染再拡大と政治の混乱、長期金利の上昇という「3つのリスク」が横たわる。大規模な資産購入で市場の安全網を強める狙いだ。

FRBのパウエル議長=ロイター

FRBは25日、4~5日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表し、正副議長ら会合参加者が量的緩和の見直しを集中議論したことを明らかにした。FRBはコロナ危機によって3月に量的緩和を復活させ、現在では米国債を月800億ドル(約8兆4千億円)、住宅ローン担保証券(MBS)は同400億ドルのペースで買い入れている。

議事要旨では「多くの会合参加者が、早期に資産購入の指針を強化した方がいいと判断した」と明らかにした。FRBはコロナ危機の発生以降、資産購入の目的を「円滑な市場機能の維持」としており、明確には実体経済の押し上げ役と位置づけていない。議事要旨による「指針の強化」とは、資産購入を明確に金融緩和の手段と位置づけて、購入量などを増やす可能性があることを示唆したものだ。

実際、議事要旨では量的緩和の拡充の手法にも言及。具体的には「資産の購入ペースの増額か、購入国債の年限長期化」の2つを挙げた。

緩和姿勢のアピールには、購入金額の引き上げが分かりやすいが、足元のペースは既に量的緩和第1~3弾(08年~14年)を上回ってフル稼働に近い。FRBが緩和拡充の補佐的な手段として挙げた「年限の長期化」は、短期債ではなく長期債の買い入れに注力して、長期金利の引き下げにつなげるものだ。

例えば11月中旬時点でFRBは4兆5840億ドルの米国債を保有するが、償還期間が10年以上残る長期債は1兆ドルにすぎない。逆に1年未満という短期債を1兆ドルほど抱えており、この構成を長期債中心に替えるだけでも長期金利の押し下げ効果が見込める。

米経済は7~9月期に年率換算で前期比33%というプラス成長になり、持ち直しに向かっている。にもかかわらず、FRBが量的緩和の拡充を視野に入れるのは、3つのリスクがなお横たわるためだ。

1つは新型コロナの感染再拡大だ。米国では1日あたりの新規感染者数は20万人弱にまで増え、飲食店の夜間営業などが再び制限され始めた。接客業を中心に再雇用が大幅に遅れ、長期失業の懸念が増大。FRBも議事要旨で「景気見通しは不確実性がある」と警戒感をにじませた。

2つ目のリスクは金利だ。米10年債利回りは量的緩和を再開した3~4月に0.5%台まで下がったが、足元は1.0%に近づく。米大統領選で当選が確実となった民主党のバイデン前副大統領が巨額のインフラ投資を公約。景気期待と財政懸念の2つの金利上昇圧力が強まりつつある。

3つ目のリスクは政治だ。11月の大統領選・連邦議会選後、米上下両院は政権移行までの「レームダック議会」に突入した。財政出動の議論も途絶え、米経済は失業給付の特例などの公的支援が相次ぎ失効する「財政の崖」に直面している。

FRBがコロナ対策として発動した緊急資金供給も、トランプ政権が12月末で大幅に縮小するよう要求し、4兆ドル規模だった資金枠は半減する見通しだ。FRBの緊急資金供給は市場の安心感を高める「見せ金効果」があっただけに、経済に突発的なショックが走れば、市場の動揺が止まらなくなる懸念がある。

FRBは25日公表した議事要旨で「もし適切と判断すれば、追加緩和が可能だ」とも明示した。最短なら12月15~16日の次回FOMCで量的緩和の拡充に踏み切る可能性を示唆したもので、早期に景気や市場の不安の芽を摘む狙いがある。

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