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ブラックホールの存在 ノーベル賞学者が半世紀前に予想

日経サイエンス

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今年のノーベル賞の授賞式が12月10日に迫った。ブラックホールの存在を数学的に予想し、ノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ペンローズ英オックスフォード大学名誉教授(89)は、歴代の受賞者の中でも有名人だ。周期性がないのに隙間なくぴったり敷き詰められる「ペンローズ・タイル」や、絵には描けるが実際には作れない「無限階段」などの不可能図形を生み出し、エッシャーの絵画をはじめとする美術や建築に影響を与えた。ロボット制御などの分野で広く使われる「ムーア・ペンローズの逆行列」に名を残し、相対性理論を量子力学に結びつける「ツイスター理論」の提唱者でもある。

48年前に『サイエンス』誌に掲載されたペンローズ博士のブラックホールについての解説記事

今回の受賞理由となったのは1965年、ペンローズが33歳のときに発表した「特異点定理」だ。アインシュタインの相対性理論によって、重力は時空の曲がりによって説明されるようになったが、この理論を追究していくと、時空の曲率が無限大になり、相対性理論そのものが破綻してしまうという奇妙な場所、「特異点」の存在が導かれる。ペンローズは、「正のエネルギーが存在する」といった物理的にごく自然な仮定だけを使って、宇宙に実際に特異点が存在することを数学の手法で証明した。ブラックホールの中心には、まさにこの特異点があると考えられている。

論文を発表した7年後の1972年、ペンローズは米の一般向けの科学誌「サイエンティフィック・アメリカン」に、ブラックホールについての解説記事を執筆した。現在の視点から読むと、それは今から半世紀前に、相対性理論からいかにしてブラックホールの存在が予想されるに至ったかを語る科学史の物語になっている。記事の最後でペンローズは、当時はまだ理論上の存在だったブラックホールを観測で確かめる方法を示した。「もし連星系や球状星団などにブラックホールが存在すれば、(周囲の)天体の運動に影響を及ぼす重力的な効果によって、その存在を突き止めることができるかもしれない」

1990年代になってから、天の川銀河の中心にある「いて座Aスター」の周囲の星の動きの観測が始まった。南米チリとハワイの巨大望遠鏡を使った観測の国際プロジェクトをそれぞれ率いた独マックス・プランク地球外物理学研究所のラインハルト・ゲンツェル教授とカリフォルニア大学ロサンゼルス校のアンドレア・ゲズ教授は、いて座Aスターが太陽の400万倍の質量を持つ巨大ブラックホールであることをつきとめた。両氏はペンローズ氏とともに、今年のノーベル物理学賞を授与される。

(1972年のペンローズの記事「宇宙の謎"ブラックホール"」は現在発売中の日経サイエンス1月号に再掲)

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発行 : 日経サイエンス
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