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ファンドのPERとは 指標で知るファンド運用の特色

投信観測所

PER(株価収益率)は上場個別株の投資判断尺度として用いられている代表的な指標の一つだ。現在の株価が企業の一株あたり予想純利益の何倍かを示し、PERが高いほど企業利益に比べ株価が割高、低いほど割安と評価するのが基本だ。

個別株のPERがあるということは、それらを組み入れて運用する投資信託(ファンド)にもPERが存在することになる。ファンドのPERは現在どんな状況か。日本株アクティブファンドのPERを測り、ランキングしてみた。

NYダウのPERと同じ手法で計算

まずは、ファンドが組み入れている個別株とその組み入れ比率、各銘柄のPERが分かったとして、ファンド全体のPERをどう測ったらいいのだろうか。

個別株のPER計算式の分子が株価、分母が一株利益なのに準じて、ファンドの組み入れ銘柄全体の時価総額合計を純利益合計で割って求める方法や、各銘柄のPERを組み入れ比率で加重平均して求める方法も考えられるが、いずれも正確なPERを測る手法としてはふさわしくない。

ファンドのPERを適正に計算するには「調和加重平均」と呼ぶ手法を使う。概略的にいうと「銘柄の組み入れ比率の合計」を「『PERの逆数』を組み入れ比率で加重合計した値」で割って算出する。通常、純利益がマイナスの赤字企業のPERは計算できないが、この手法だと赤字企業を組み入れている場合にも、その影響がファンドPERに反映されるメリットがある。

米国市場を代表する株価指数であるダウ工業株30種平均のPERも調和加重平均方式で計算しているとされ、ファンドのPER計算手法の国際標準とも言える。

中小型株ファンドでもPERは2極化

日本株でアクティブ(積極)運用するファンドについて、直近で開示された有価証券報告書記載の組み入れ銘柄の情報を基に決算日時点のPERを計算し、表に高PER、低PERのファンドを10本ずつピックアップした。併せて前期決算日からのPER増減幅も計測。日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)に連動するETF(上場投信)の中で最大規模のETF各1本のPERも比較対象として加えた(図A)。

高PERには中小型株ファンドがずらりと並び、TOPIX連動ETFのPER(約19倍、2020年7月決算時点)の2倍以上の高さだ。一方、低PER側はTOPIX連動ETFのPERの半分未満で、ファンド名には「配当」や「バリュー」が目につく。バリュー株は割安株ともいい、一般に低PERや低PBR(株価純資産倍率)が特徴になっている。

最大PERはアセットマネジメントOneが運用する「DIAM新興市場日本株ファンド」の114(倍)。決算時の組み入れ銘柄には赤字決算予想企業も散見され、ファンド全体の純利益を押し下げたことが高PERの一因となっているが、1年リターンは約91%と好成績を記録している。

同じくアセットマネジメントOneの中小型株運用チームが運用を手掛ける「厳選ジャパン」のPERは約39(倍)で、1年リターンは約76%とこちらも堅調な成績を残している。前期決算日からのPERの増減をみると、「DIAM新興市場日本株ファンド」が67も増えたのとは対照的に、「厳選ジャパン」は約18減少している。

両ファンドの運用において組み入れ銘柄を決める際のPERの扱いについて、同社によると「あくまで様々な分析指標の一つとして判断材料にしている」そうだ。PERの大幅増減は、両ファンドともコロナ下にかけ果敢に組み入れ銘柄を入れ替えてきたことを示している。

もうひとつ注目したいのは、中小型株ファンドとして数年前にはトップクラスの運用成績を残していた三井住友DSアセットマネジメントの「大和住銀日本小型株ファンド」と「J-Stock アクティブ・オープン」が低PER側に入っている点だ。「大和住銀日本小型株ファンド」のPERは日本株アクティブファンドの中で最低水準の8(倍)にとどまる。

リターンに目を向けると、低PERファンドは高PERファンドに比べ総じて振るわない。ここ数年の高PERのグロース(成長)株優位、低PERのバリュー株劣位の流れを受けたものとみられるが、11月に入ってから20日までのリターンを比較すると「大和住銀日本小型株ファンド」が5.6%上昇と「DIAM新興市場日本株ファンド」の1.3%上昇を上回った。両ファンドの今後の運用成績は日本株市場でバリュー株が本格的に息を吹き返してきたかどうかのバロメーターにもなりそうだ。

株価の割高・割安を判断する尺度としてPERはもはや役に立たなくなったという見方もある。そうだとしても、中小型株ファンドがすべて高PERのグロース株投資重視とは限らないなど、ファンドのPERは運用内容の現状や特色を確認する手掛かりの一つになる。

(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

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