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事故の真相見逃さない 車の装置「EDR」活用広がる

車からEDRデータを取り込む調査員(10月、東京都新宿区)=あいおいニッセイ同和損保提供

交通事故の原因を調べる際に、衝突時の速度や操作の状況を記録する「イベント・データ・レコーダー(EDR)」の活用が広がっている。元はエアバッグの作動を確認するための装置だが、詳細なデータが残るため裁判上の有力な証拠になる。米国ではデータを一般公開し、車の安全性向上の研究に生かしている。

夜間の郊外の交差点で車2台が出合い頭に衝突した事故で、損害保険の算定を巡り当時の状況が問題になった。一方の道路には赤色点滅信号があり、車のドライバーは「一時停止した」と証言。しかし相手側は「止まっていない」と訴え、言い分が食い違った。

あいおいニッセイ同和損保が実際に取り扱った事故事例で、同社は当時の状況を調べるため事故車のEDRを分析。データでは、赤色点滅信号の車がいったん停止して交差点に進入したことが分かり、相手側も納得したという。

同社がEDRのデータ活用を始めたのは2017年から。これまでに約400件の事故の調査で役立てたといい、担当者は「事故の状況や過失割合を調べるうえでEDRのデータは非常に効果的だ」と話す。

警察が捜査に生かすケースも増えている。警察庁の科学警察研究所は07年度から各県警などの要請を受けてEDRの解析を始めた。19年の解析は31件で、09年(4件)の約8倍。科警研を中心にEDRに詳しい人材の育成も進めており、自力で解析できる都道府県警も出てきている。

福岡市博多区で16年12月、タクシーが病院に突っ込み3人が死亡した事故の裁判では、EDRのデータが証拠として採用された。福岡高裁は20年2月、EDRの記録などを基にブレーキとアクセルの踏み間違いを事故原因と認定した一審・福岡地裁判決を支持し、被告の控訴を棄却した。

刑事裁判ではEDRのデータの読み取り方を巡って争われるケースもある。アクセルの操作などは電圧などの数値で示され、その評価を巡って判断がが割れることもあるという。中京大の中川由賀教授(刑事法)は「自動運転などの普及に伴いドライバーが注意を払っていない状況での事故も増え、EDRの重要性は高まる」としたうえで、「事実認定はEDRだけでなく、目撃者の供述など他の証拠を含めた総合的な判断が求められる」と指摘する。

米国は12年、EDRに記録する情報を連邦規則で定め、車両販売後一定期間内にEDRデータの読み出しツールがあることを確認する義務を課すことで、データを取り扱いやすくした。経済産業省の16年度の委託調査によると、米国運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)がEDRデータを無償で一般に公開しており、事故分析などに幅広く活用しているという。

日本ではEDRについての法整備はなく、一般的な事故予防のために用いられる機会は少ない。所管する国土交通省の担当者は「EDRデータを適切に収集・分析し、将来的には交通安全に生かせるよう検討していきたい」と話した。

 ▼イベント・データ・レコーダー(EDR) 車の底部などに格納される小型の装置で、衝突前後数秒間の走行速度や、アクセルとブレーキの操作などを0.004~0.5秒間隔で記録する。メーカー側が訴訟に備えてエアバッグの作動記録を残すため搭載したのが先駆けで、1990年代中ごろから米国で活用され始めたとされる。
 日本では2000年ごろから普及し始め、国土交通省は08年、記録するデータの種類などをまとめたEDRのガイドラインを策定した。法律上の搭載義務はないが、自動車部品で世界最大手のボッシュによると、現在新車販売されているほぼ全ての車種に搭載されている。国連の「自動車基準調和世界フォーラム」の分科会では、日本が主導する形でEDRの国際基準が検討されている。

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