FRB、量的緩和の拡充検討 12月にも指針見直し
【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は25日、11月4~5日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公表した。参加者の多くは会合で「米国債の購入増など、追加緩和が可能だ」などと指摘。早ければ12月中旬の次回会合で、量的緩和政策の拡充を検討する方針を表明した。

4~5日のFOMCでは、事実上のゼロ金利政策を据え置き、米国債を月800億ドル(約8兆4千億円)、住宅ローン担保証券(MBS)も同400億ドルのペースで買い入れる量的緩和の継続も決めた。ただ、会合では量的緩和の見直しを集中的に議論し、会合参加者の多くは「FOMCは追加緩和が可能だ」などと言及。米国債の購入ペースなどの指針を「比較的早い時期に強化した方がいい」と判断した。
米経済は新型コロナウイルスの影響で4~6月期に戦後最悪のマイナス成長となったが、7~9月期以降は持ち直しに転じている。それにもかかわらずFRBが追加緩和に言及したのは、足元で想定外に金利上昇圧力がかかってきたためだ。景気の本格回復を前に市中金利が上昇すれば、コロナ危機からの回復機運に水を差しかねない。

FOMCは具体的な緩和手段として「米国債の買い入れペースの増額か、購入国債の年限の長期化」を議事要旨内で挙げた。月800億ドルの米国債の購入を引き上げれば、市場には緩和強化をアピールしやすい。米国債の購入量は08~14年の量的緩和第1~3弾を既に超えるペースだ。そのため購入量は変えず、買い入れ対象を短期債ではなく長期債とし、市中金利に影響する長期金利の引き下げに注力する案も浮上している。
3日の大統領選では民主党のバイデン前副大統領が当選を確実にした。同氏は4年で2兆ドルという大型インフラ投資を公約。市場には景気期待と財政懸念による二重の金利上昇圧力がかかる。米10年国債利回りはコロナ危機の発生直後に0.5%台まで急低下したが、選挙後は1.0%近くまで上昇。金融緩和の維持には長期金利を抑える必要がある。
FOMCは景気回復ペースの鈍化も警戒する。議事要旨では「経済見通しは引き続き不確実だ」と警戒感を表明。新型コロナの感染再拡大を懸念したほか、失業給付の特例の打ち切りなど「財政支援が十分に続かないリスク」も指摘した。大統領選後の「政治の空白」もリスクとなる中で、コロナ危機からの早期脱却へFRBは追加緩和の検討に入る。

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