外国人生徒に日本語指導、高校で正式単位に 文科省
外国籍の高校生の教育体制を充実させるため、文部科学省は2023年度にも日本語指導を正式な単位として認める方針を固めた。現状は通常の授業とは別に学校ごとの判断で放課後などに実施している。単位を認めるに当たり教員や指導方法といった要件の検討も進める。

外国人労働者の拡大に伴って外国籍の児童生徒は増え続けている。文科省は、日本語の教え方のノウハウを身につけた教員を育てるなど、日本で子どもを安心して育てられる環境づくりを急ぐ。
神奈川県のある県立高校に今春、来日後3年以内の生徒10人が「特別募集」枠で入学した。中国やフィリピン、カンボジアなどから来た生徒たちの日本語のレベルはまちまち。学校は月に4回、放課後に希望者を集めて日本語を指導している。
日本人生徒が受ける授業と同じ内容については、同じ時間帯に別室で教えている。漢字にルビを振った教材を用意するなどしているが、副校長は「日本語で教えてもどれくらい定着させられるか自信はない。それぞれが必要な教育を受けられる方法が不可欠だ」と話す。
小中学校では14年度から「特別の教育課程」として別室での日本語指導が認められているが、高校では単位を取得できる正式な授業として認められていない。外国人生徒らへの日本語指導は放課後などの時間を使って進められており、指導の方法についても学校任せになっている。
文科省は高校でも「特別の教育課程」を導入できるよう、指導する教員や授業のコマ数、指導の方法などの要件を21年度中に検討する。学校教育法施行規則を改正した上で23年度にも単位として認められるようにする。
言語の壁で進学を諦める高校生や保護者は少なくない。17年度に公立高校などに在籍した日本語指導の必要な生徒3933人のうち、9.6%に当たる378人が中退した。高校生全体の中退率1.3%に比べると7倍になる。高校を卒業できても大学や専門学校に進めた生徒は4割にとどまっている。

文科省によると、公立の小中高校などで日本語指導を必要とする児童生徒は18年度時点で5万人を超えた。うち2割は「指導者がいない」などの理由で日本語を十分に学べていない。
同省は外国から来た子どもに日本語を教えるノウハウを学ぶプログラムの開発を21年度に始める方針。60単位以上でつくる講座を大学で開き、現役教員に受けてもらう計画だ。
小中学校についても、日本語指導が必要な児童生徒18人につき教員1人を26年度までに配置できるよう教員定数を見直す。21年度は全国で90人の教員を増やす予定で、同年度予算案で費用を要求した。
同省の担当者は「日本語を勉強できないと卒業や進学は難しい。しっかり日本語指導を受け、日本社会で活躍できるようにしていきたい」と話している。