ウォルマート、ドライブスルーで受け取り 作業員倍増
80兆円の米年末商戦、ネット通販3割に
【ニューヨーク=白岩ひおな、河内真帆】米ウォルマートはネットで注文した商品を店舗の駐車場で車から降りずに受け取れるサービスを強化するため、年末商戦に向け「ピッカー」と呼ぶ作業員を前年の倍に増やす。「ブラックフライデー」を控え、米小売り各社はコロナ下で新たな売り方を探る。ネット通販は、80兆円市場とされる米国の年末商戦の3割になるとの見方もある。

ブラックフライデーは米国の感謝祭の祝日(11月26日)の翌日の金曜日をさす。小売り各社が大規模なセールを実施するのが恒例で、買い物客が店頭に押し寄せる光景が冬の風物詩だった。だが今年は事情が異なる。新型コロナの感染拡大の「第3波」に見舞われている米国は累計感染者数が1200万人を超え、入院者数も8万人超と医療体制の逼迫も深刻だ。

小売り各社は買い物客や店員の感染リスクを避け、消費を呼び込もうと対策を打つ。ウォルマートは年末商戦中のオンライン注文の需要増を見込み、ピッカーと呼ばれるスタッフを前年から倍に増やす。顧客が車に乗ったまま指定された場所で商品を受け取る「カーブサイド・ピックアップ」や宅配サービスの要員などで15万7千人超を配置する計画だ。

利用客の分散や物流の逼迫を避けるため、セールを複数回に分け、11月上旬から前倒しで始めた。3回目のセールも25日から開始する。割引商品は実店舗にとどまらずオンラインでも購入できるようにし、通販やピックアップの利用を促す。
「店内20~50%割引」。16日から前倒しでセールを始めた百貨店大手メーシーズは、ホリデーシーズンの買い物を早めに済ませるよう利用客に呼びかける。ニューヨーク市に住むケイシー・ミルズさん(24)は「まだそこまで混んでいないから、ゆっくり買い物できる。冬物を買い足したかった」と話す。
同社は年末商戦をにらみ、不採算のため閉店したデラウェア州とコロラド州の2店をオンライン注文の物流に特化する「ダークストア」として生き残らせた。顧客がオンラインで注文した商品の受け取りや返品に対応するための拠点として活用する。24~28日にオンラインセールを開催する。
実店舗を持つ各社がオンラインへの移行を進める一方、通販大手との競争も激しくなっている。アマゾン・ドット・コムは注文が集中する年末商戦の時期の配送遅延を防ごうと、オンラインで購入した商品を自社の小売店などで受け取れるサービスを新たに始めた。同社は全米13州でリアル書店を運営しているほか、商品受け取り用のロッカーやカウンターを全米900以上の町や都市で展開する。こうしたリアルの拠点をネットと融合させる取り組みだ。
全米小売業協会(NRF)は23日、2020年の年末商戦の売上高が80兆円規模と19年より4%前後増えるとの予測を発表した。11~12月の年末商戦売上高(自動車、ガソリン、外食を除く)は7553億~7667億ドル(約79兆~80兆円)で3.6~5.2%増える。通販は2000億ドル規模で20~30%増え、全体の3割近くを占める見通しだ。
一方、米調査会社CFRAリサーチは、コロナ下で一斉に通販シフトが進む中で「勝ち組・負け組が鮮明になっている」と指摘する。11月1日時点でメーシーズやコールズ、JCペニー、ノードストロームなどの百貨店勢の通販サイトへのアクセスが減る一方、人気の高いアパレルショップやアクセサリーブランドのサイトへのアクセスが急増しているとした。