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食卓が変わる? 70年ぶり、新たな漁業法が施行へ

現場を歩いてみた

12月1日、70年ぶりに改正された新漁業法が施行される。魚を増やし、漁業を成長産業にすることを目指す法律だ。世界一を誇った日本の水産業は今、気候変動や取り過ぎで漁獲が減り、窮地に立つ。一方、世界の魚需要は増えている。海洋環境の変化に科学で立ち向かい、漁業をもうかる産業にして、若者の参入を促す挑戦が船出する。

漁場はいま

日本で最も漁獲が多い北海道。イカやサケなど百種を超す水揚げを誇る道南の南茅部地区は今、最漁期を迎えている。

「サバが大漁だ!」。11月下旬の午前5時。野村水産(北海道函館市)の野村譲社長は定置網に取り付けた魚群探知機をのぞき込み、顔をほころばせた。毎朝、網を上げる前に、どんな魚がどのくらい入ったか確認している。「またあんなことがあったら大変だから」

3年前、同地区の仲間の網に30キロ未満のクロマグロが大量にかかった。希少なクロマグロは資源保護のため国際的に漁獲量が規制されている。その魚が秋サケやブリの季節に何百トンもかかり、枠を超過。他地域の枠が削られ、南かやべ漁業協同組合(函館市)は賠償金1億5千万円を払った。

魚を「逃がす」

魚をとるだけでなく、逃がすことも

今は「マグロが網に入ったら一緒にとれたイカやブリも逃がしている」(南かやべ漁協の鎌田光夫組合長)。南茅部の網はサッカー場をしのぐ大きさで、入る魚も多種多様。「金魚すくいのようにマグロだけ逃がすのは不可能」(野村社長)だからだ。こうして全国のマグロ漁師は魚を「とる」のでなく「逃がす」努力を続けている。このためクロマグロには資源回復の兆しも見えてきた。

どう管理する?

新漁業法は、多くの魚をマグロのようにきめ細かく管理して「魚も、漁師の収入も増やす」(水産庁の神谷崇次長)ことを狙う。まずは生態系や資源量、季節・海域ごとの漁獲量など、科学者による水産資源調査を強化する。対象魚種を現在の50魚種から200魚種に広げ、食卓に上るほとんどの魚をカバーする。

顕微鏡で拡大したサバの頭部にある耳石。生育の年数が推定できる(横浜市金沢区の水産資源研究所)
東北で採取したゴマサバの胃袋。生態調査も海の資源を把握する貴重な手がかりだ

国の漁獲可能量(TAC)制度の対象魚種も増やす。現行のサバやイワシなど8魚種にホッケやブリなど10~20魚種を追加。漁獲量ベースで8割の魚に漁獲枠を設ける。

海外では人気職種

水産業は国際的には成長産業だ。ヘルシー志向や和食人気で世界の魚消費量は30年で倍増した。サーモンを世界に輸出するノルウェーでは、漁師は収入が高い人気の職種で、日焼けサロンを搭載している漁船もある。

ただ日本の2019年の漁業・養殖生産量は416万トン。1956年の統計開始以来の最低で、ピークの84年の3分の1だ。「資源管理は今やらないと間に合わなくなる」(桜井泰憲・北海道大学名誉教授)。もちろん漁師の努力だけでは足りない。激変する自然環境への対応や、サンマやイカなどを乱獲する近隣国・地域との国際的な漁獲量管理も同時に進める必要がある。

取材・佐々木たくみ(商品部)、藤井凱(写真映像部) 編集・増渕稔(商品部)、鈴木輝良(写真映像部)、福島朗子、太田美菜子(デザイン部)

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