/

栗東厩舎火災から3カ月 JRA、防火対策見直し

8月14日に起きた日本中央競馬会(JRA)栗東トレーニング・センター(滋賀県栗東市)の厩舎火災から3カ月あまりがたった。被害は大きく、厩舎1棟が半焼し、競走馬5頭が死んだ。木造の建物に加え、飼料など燃えやすいものが多い厩舎の防火対策強化は急務。JRAは再発防止に向け、消防による防火講習や厩舎の設備点検などの対策を進める。

火災では厩舎の西側半分が焼け落ち、競走馬5頭が犠牲となった=JRA提供

翌日に競馬を控えた8月14日午後5時36分ごろ、栗東トレセン内にある村山明厩舎から火の手が上がった。約3時間燃え続け、同厩舎の西側半分が焼け落ちた。逃げ遅れた2歳馬3頭と7歳馬1頭が14日のうちに死に、煙を吸い込み気管をやけどした6歳の牝馬1頭が翌15日に命を落とした。

出火原因は特定できず

隣接する中尾秀正厩舎、高柳大輔厩舎にも雨どいが溶けるなどの被害があった。馬は無事だったが、この週のレースに出る予定だった両厩舎の所属馬はそれぞれ1頭ずつ出走を取り消した。出火原因については8月17日、地元の消防と警察が「特定できない」という結論を出した。

通常、夕方のこの時間帯ではトレセン内に残っている人も少ない。今回の火事の際は、他の厩舎の従業員も含め、残っていた人たちが馬を助け出した。「火を見た馬がおびえて動けなくなる」(栗東トレセンの厩舎関係者)など、救出には困難を強いられたようだ。当時、現場にいた人によると、馬具を付ける余裕などはなく、馬を馬房から出すとそのまま外へと逃がし、トレセン内に放たれた馬をあとで捕まえる形で避難させたという。

北海道で競馬が行われている夏季は現地に滞在する馬も多く、他の時期と比べ、トレセン内にいる馬の数は少ない。実際、1つの厩舎には20頭の馬を収容できるが、火災のあった当時、村山厩舎にいたのは12頭だった。他の時期なら犠牲になった馬が増えていた可能性もある。

火事の発生した時間がもっと遅かった場合、トレセン内に残っている人の数がさらに減り、馬の救出が遅れるおそれもあった。時期や時間帯によっては被害がさらに拡大していたとも考えられる。今後の防火対策は非常に重要な課題となる。

燃えやすい厩舎の構造

そもそも厩舎は構造上、「極めて燃えやすい」とJRAは説明する。栗東の厩舎はすべて木造で、その中に飼料、寝わらや木くずなどの敷料といった燃えやすいものがかなりの量、置かれている。

厩舎が木造なのは「競走馬の馬体保護を第一に考えている」(JRA)ことが理由。高温多湿な日本の気候に合わせ、通気性や吸湿性の確保を重視しているほか、競走馬が壁を蹴ったりした場合のケガ防止のため、クッション性が高い木を使っているという。

JRAはこれまでも防火対策を取ってきた。厩舎には消火器が5本置かれ、厩舎の両端には屋外消火栓も設けられている。消火訓練も年3回実施していた。

厩舎内には他に、熱感知器が15個、煙感知器も11個取り付けられている。熱と煙を感知するとベルが鳴り、トレセン内で警備を担当する「保安隊」の拠点でも監視板が作動。どの厩舎のどのあたりで煙が出たかがわかるようになっている。今回もこの仕組みが働き、「保安隊も早めに現場に駆け付けられ、屋外消火栓での初期消火もできた」とJRAは強調する。

それでも競走馬5頭が死ぬ惨事が起こった。JRAは再発防止に向け、10月に調教師、11月には厩舎従業員を対象にした消防による講習会を実施。10月から12月までの間に、栗東に加えて東日本の美浦トレーニング・センター(茨城県美浦村)も含めた全厩舎の電気、ガス設備などを臨時に点検する。

調教師が厩舎の建物を改造する際の手続きも見直す。厩舎はJRAが調教師に貸し付けており、通常、調教師は貸し付けられた建物にエアコンやミストを取り付けるなど、独自に改造を加えて使用する。今回の火災まではJRAの許可を受ければ改造が可能だったが、今後は調教師が改造の内容について地元消防に防火上問題がないかを問い合わせてから、JRAに改造の許可を申請する方式に変える。

喫煙と防火意識向上の必要性

ただ、気になる点はある。たばこの問題である。トレセン関係者には喫煙者が多い。今は見なくなったが、以前は馬に乗りながらたばこを吸う人もいたほどだ。

改正健康増進法により、2020年4月から原則屋内禁煙となったことから、建物の外に喫煙スペースを設ける厩舎も多い。「屋外に置いた灰皿に水を張らないなど、管理が甘い厩舎から、また火災が起こる危険があるのでは」(栗東のある調教師)といった不安の声も上がる。JRAはこれまでも喫煙に関する防火指導をしているというが、さらなる意識向上が必要だろう。

火災から3カ月以上が立ち、焼けた厩舎はすでに取り壊された。跡地の今後は「厩舎の建て直しを含めて検討中」(JRA)という。厩舎の火災保険はJRAが一括で加入。保険料は調教師に厩舎を貸し付ける際の料金に含まれている。出火原因が不明とされた今回の火災の原状回復の費用について、JRAは「厩舎の本体部分についてはJRA、調教師が後から取り付けた設備については調教師が負担する」と説明する。惨事を繰り返さないためにも、防火対策の強化が急がれる。

(関根慶太郎)

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン