中古マンション、買い時の築年数に変化
20代からのマイホーム考(13)

中古マンションの需要は以前に比べて増えているようです。新築よりも値ごろ感があるうえ、駅に近い地域ではマンションに適した規模の土地が供給されにくいため新築より中古のほうがよりよい立地の物件を探しやすいことなどが背景です。こうした中、築何年ころのマンションを買えば、値下がりしにくいのかといったことを気にする人が従来以上に増えている気がします。
築15年以降は値下がりしにくい?
10年ほど前までは、新築時から築15年ころまでにマンション価格はおおむね半値になり、それ以降は値下がりしにくいと言われていました。そのため築15年程度の中古マンションが狙い目との見方がありました。
実際に購入したマンションがどのように値下がりするかは簡単には予測が難しいものです。しかし、築年数の違いによって平均成約単価がどのように変化しているかを調べれば、マンション価格の値下がりを想定することは可能です。そこで、東日本不動産流通機構に登録された東京23区の中古マンション成約データをもとに、築年数別の平均成約単価をグラフ化してみました。

このグラフを見ると、2006~10年は築17年以降から平均成約単価が横ばい傾向になっていることがわかります。10年前は、築15年以降は値下がりしにくいと言われていたのも理解できます。一方、16~20年を見ると様相は大きく変化していることがわかります。築25年ころまで値下がりが続いています。なぜこのような変化が生じたのでしょうか。
古いマンションの取引が拡大
そこで、同じ時期(06~10年および16~20年)の築年数別の成約件数を見てみることにしました。

06~10年は築7年前後のマンション取引件数がピークとなっていますが、16~20年は築15年前後がピークとなり、築10年から築23年程度の中古マンションの取引が大幅に増加していることがわかります。買主は築年数の差は価格の差として表れると考えているでしょうから、築10年から築23年程度の中古マンション取引が増えたことによって、築15年以降の中古マンションにおいても築年数の差が価格に表れるようになったのではないかと筆者は考えています。
さらに、06~10年は築27年前後のマンションが第2のピークとなっていますが、最近では築37年前後の築年数の取引件数が第2のピークとなっており、築30年以上の中古マンション取引が増加しています。築40年以上の中古マンション取引も顕著な増加を示しています。これは自分なりにリフォームやリノベーションを行ったうえで暮らしたいという方が増加したからではないかと思われます。築年数30年以上のマンションでも、水回り設備を交換したり壁紙を貼り替えるといった目に見える部分だけの改修ではなく、給排水管の交換など目に見えない部分も含めて更新すれば安心して暮らせるという認識が広がったことも、築年数が経過した中古マンション取引が増加した背景の一つではないかと思います。
狙い目の中古マンションとは
マンション成約単価の変化だけを見ると築25年以降のマンションが値下がりしにくいことがわかります。値下がりしにくいという面では一つの指標となるものと思われますが、築年数の経過はマンションの共用部分にも及びますので、購入する専有部分だけ更新しても問題は残ります。マンションは「共同住宅」である以上、共用部はマンション所有者全員で維持管理していかねばなりません。
築年数が30年以上経過したマンションには2つの高齢化(建物や設備の老朽化、所有者の高齢化)という課題があると言われています。将来の修繕に対して管理組合がどう取り組んでいるか、そのマンションが中古物件としてきちんと流通しているか(現役世代にも売れているマンションか)など、注意すべきポイントがほかにもあることに留意しておくとよいと思います。

住宅資金は老後資金、教育資金と並ぶ人生三大資金です。20代、30代から考えたい「失敗しないマイホーム選び」について不動産コンサルタントの田中歩氏が解説します。隔週月曜日に掲載します。
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