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成長株を割安で仕込むのが本物の長期投資(澤上篤人)

「ゴキゲン長期投資」のススメ さわかみ投信会長

投資業界のカリスマの一人、澤上篤人氏が考える長期投資のあるべき姿を、同社最高投資責任者の草刈貴弘氏との対談形式で紹介する。

超・成長株ならぬ超・割高株

澤上篤人(以下、澤上) 米国株、とりわけGAFAMと呼ばれる米ネット関連企業の株価上昇ぶりは、すさまじいの一言である。ネット関連やDX(デジタルトランスフォーメーション)といった新しいビジネス分野の急成長株に、投資家がイナゴのように群がっているためだ。そう、まさに「イナゴ投資家」による高騰だ。投資家の買いがグロース(成長)株に集中すると、「バリュー(割安)株投資は一体どうなってしまうのか?」という議論が決まったように出てくる。

草刈貴弘(以下、草刈) 以前もイナゴ投資家の話をしましたが、それは米国内の米国人投資家を想定していました。ところが今は世界中の個人投資家が米国株市場に集まってきている状況です。

例えば日本の投資信託ですが、2020年の1~9月、日本株を中心に運用する投信は6000億円の純流出だったのに対して、外国株投信には2兆円を超えるお金が集まりました。主な投資先は米国株です。

澤上世界的なカネ余りによるバブル高という面も否定できないよ。いくらGAFAMは高成長が期待できると言っても、さすがに今の買われ方は異常だ。

いつのバブルでも、何のバブルでも同じだが、値上がりしているところへは投機マネーがどんどん集まる。株で言えば、買い上がる理由なんてどうでもいい。勢いよく株価が上がっていれば、その勢いに乗ろうと、多くの投資家が群がってくる。

デジタル革命だ何だと、もっともらしい買い材料を掲げたりもするが、そんなものはとってつけたようなもの。株価がどんどん上がっている。それを見た投資家が我も我もと買う。買うから上がる。上がるから人気が出る。この2つの相乗効果が、今のバブル的な株高を演出している。

草刈 一部企業の株価上昇は、合理的な説明が難しい状況になっているように見えます。ただ、インデックス運用の弊害という側面もあるのではないでしょうか。ハイテク企業は成長力が高く、成長期待も大きいので株価が上がる。それは時価総額が膨らむことを意味します。インデックス運用に集まった資金は、企業の時価総額に応じて配分され、投資されます。

インデックス運用では個別企業の株価水準は見ません。普通に考えれば買いをためらうような高値でも、どんどん買っていってしまう。株価が上がるほど資金が流れ込むという、いびつな構図をインデックス運用は持っています。

今は日本では直接、欧米では間接的に中央銀行がインデックス運用を介して株式市場を買い支えていますから、影響がより顕著になっていますね。

バリュー投資の出番はカネ余りバブル崩壊後

澤上 これは当り前のことだが、株式投資の基本は、利益成長の可能性がある企業の株価が割安に放置されている間に買い仕込むことである。それを、さわかみ投信では「将来の納得に対し、いまの不納得で行動する」といっている。

「将来の納得」とは、将来の利益成長可能性に対する確たる読みである。「いまの不納得で行動する」とは、その企業の将来性や可能性に市場が気付いておらず、株価がまだ安値にある間に買っておこうという考え方だ。

草刈 色々な表現や考え方があると思いますが、投資判断の要は想定した将来の価値に対して今の株価が割安かどうかです。

その意味では、足元で高い成長をしているかということよりも、その高い成長が今後も続けられるかどうかが重要です。割高という評価であっても、今後も高い成長が続くなら、割高な株価はいずれはフェアバリュー(適正価値)になる。その時点でもさらなる成長が見込めるなら、結果的には割安で仕込めたことになりますからね。逆に、その時、成長が鈍化してしまうと割高で掴んでしまったということにもなりかねない。

一方、将来の復活を想定した投資も考えられます。大きく成長した企業が時代の変化に付いていけず、危機的状況に陥っている。株価はボロボロ。そこから復活して、かつてをしのぐ規模になり、市場から再評価されるという将来の可能性に投資する方法です。

前者がいわゆるグロース株投資の考え方ですが、長期にわたって成長し続ける企業を探すのは相当難しい。それこそベンチャー投資のように100のうち1当たれば御の字になってしまう。成長が一時のブームなのか時代の大きな変化なのかを判断するのは難しく、投資の再現性は低くなる。

後者がバリュー株投資で、落ち穂拾いと揶揄されることもありますが、底からの復活も、利益成長の可能性が結実したものです。成長期待しか判断材料がない前者より、最低限の企業価値が分かり、この株価で投資すれば間違いは少ないと思える水準が見える後者の方が、比較的、再現性の高い投資が可能となります。

結局、バリューかグロースかという議論は、投資対象の利益成長の可能性を評価する軸において、妥当な水準をどこに置くのかの違いとも考えられますね。

澤上 どんな高成長企業でも、株価が永遠に上がり続けることはない。どんな人気株も、今のGAFAMのように、どこまで買うのかとあきれるほど買い人気が高まる時もあれば、熟柿が木から落ちるように値下がりを始め、そのまま大きく売り込まれる時もある。

現在のカネ余りバブルも、いつかは必ず破裂する。その時には、いくら高成長企業だろうと大きく売り込まれ、グロース株投資とやらも形無しとなる。

そのあたりからだよ。市場やメディアが「バリューの出番」と騒ぎ立てるのは。そして、暴落相場に毅然と買い向かうさわかみファンドをバリュー株投資家と呼んでくれるはずさ。

草刈 自分の軸を持って投資をすれば、暴落時も含め、相場の動きに一喜一憂しなくなり、地道ながらも結果を出し続けられます。それは投資で一番大切な「市場に残り続けること」にもつながります。

澤上 フフフ。さわかみファンドはもう既に2度も暴落を生き残っているよ。2000年のITバブルの崩壊、そして08年9月のリーマン・ショックだ。いずれ到来する3度目は超大型だが、我々は「いつでも来い」だよね。

澤上篤人(さわかみ・あつと)
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締役を務めた後、96年あえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立。
草刈貴弘(くさかり・たかひろ)
2008年入社。ファンドマネジャーを経て13年から最高投資責任者(CIO)。
[日経マネー2021年1月号の記事を再構成]

日経マネー 2021年1月号 会社員でもつくれる!老後資金1億円

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/11/20)
価格 : 820円(税込み)

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