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「働く人=オール厚生年金」時代 老後の安心へ前進

年金と社会保障の役割(4)

夫婦ともに厚生年金に加入して働くのが普通になりつつある(写真はイメージ=PIXTA)

今月は社会保障、特に年金と私たちの「Life」や「Money」との関係を考えています。

今回、考えてみたいのは、今年の法律改正で前進する「働く人はみんな厚生年金に入る」という時代の流れについてです。

~厚生年金の適用拡大、さらに一歩前進~

社会保険制度は加入する対象がそれぞれ定められています。働き方によって厚生年金か国民年金に加入し、あるいは国民健康保険か各種健康保険組合に加入します。

働く人はさらに、雇用保険や労災保険に会社が加入させる義務があります。40歳を過ぎると介護保険にも加入します。

それぞれ加入する制度に条件があるということは、保険料の負担や給付に違いがあるということです。

今年成立した年金改正法で「厚生年金の適用拡大」が実施されることになりました。これは正社員という働き方に限らず、短時間労働者にも厚生年金のカバー範囲を広げるものです。

まず企業規模については、現状では従業員数500人超の企業を対象としているところを、100人規模、50人規模と段階的に引き下げていきます(2022年、24年に実施予定)。これにより多くの企業とそこで働く人たちがカバーされることになります。

対象となる人を賃金要件(月額8.8万円以上)、労働時間要件(週労働時間20時間以上)とするのは現状のままですが(学生も原則として対象外)、現在は「1年以上」の勤務期間を条件としているところを、フルタイムの勤務と同様に「2カ月」に短縮します。

~「負担増」より「年金増」にメリットあり~

今回の改正は、会社側に対し「正社員でない場合でも厚生年金適用する」ことを促します。これについて、働く人の立場からも反対の声が上がることもあります。厚生年金適用は「負担増」のイメージがあるからです。なんとか手取りを増やそうと仕事をしているのに、9.15%も保険料が引かれるのは困るというわけです。しかし、その「負担増」は将来の「年金増」となって跳ね返ってきます。

夫の扶養の範囲で働くと、保険料負担がないようにみえますが(国民年金の第3号被保険者)、国民年金分しか年金はもらえません。

しかし、勤務時間にかかわらず厚生年金適用を受けることになれば、厚生年金ももらうことができます。男性より女性のほうが長寿である傾向を考えてみれば、同一条件なら女性のほうが多くの年金をもらう可能性は高く、非正規で働くことの多い女性にとっては、悪い話ばかりではありません。

~「老後に2000万円」の不安もダブル厚生年金で解決~

2019年、ちまたで大きな騒ぎとなった「老後に2000万円」問題も、実は厚生年金の適用拡大があれば解決の糸口が見いだせます。

働き方に限らず、夫婦ともに厚生年金に加入することとなれば、これは老後の生活安定に大きく寄与します。一般的な国のモデル年金は「夫:会社員+妻:専業主婦」としていますが、年金制度でいえば、「(夫:厚生年金+基礎年金)+(妻:基礎年金)」ということです。もし夫婦とも厚生年金に加入して共働きをすれば、「(夫:厚生年金+基礎年金)+(妻:厚生年金+基礎年金)」となるので、その分老後の年金収入がアップすることになります。

仮に夫の半分くらいの厚生年金であったとしても、年60万円くらいになったとすれば、女性の老後(約25年)を考えると「1500万円の収入増」ほどのインパクトがあります(税、社会保険の負担があるので手取りではありませんが)。

非正規で働いてきたおひとりさま女性の老後にも光が差します。国民年金しかもらわないケースでは老後の家計は困窮することが確実です。厚生年金が上乗せされることで、終身年金の厚みが加わることになります。

足元では負担が重いように見えても、老後の経済的安定には十分に見合うのが厚生年金適用の拡大と位置づけられるわけです。

~「働く人はみんな厚生年金」の時代へ一歩前進~

今回の厚生年金適用拡大は、昨年の年金財政検証結果を受けたものです。公的年金の給付水準を向上させる効果が高いものとして「高齢期も厚生年金適用を受けて働き続ける」こと、「厚生年金の適用を拡大すること」がシミュレーション結果とともに示されていました。

同じ職場で働く人を「正社員か非正規雇用か」という区別をしてきた慣習は、厚生年金の適用の有無、退職金を払うか払わないかというボーダーラインでもありました。考えてみるとこれ自体がおかしな話です。

正社員でもかつては、「総合職と一般職」のような形であからさまな待遇差をつけてきたものですが、それが徐々に縮小していく中、「正社員と非正規社員」という大きな差は残り続けてきました。

厚生年金の適用拡大と同時並行で進んでいるのは「同一労働同一賃金」の取り組みです。同じ仕事をしているなら、賃金、賞与、諸手当や福利厚生に差をつけるべきではないという取り組みが進んでいます。

これから「働く人はみんな厚生年金適用にする」という時代に入っていきます。仕事の内容で賃金差はつくことがあっても、社会保険に加入するかどうかの差はつけるべきではないですし、それは国民全体の老後の安心や豊かさに通じているはずなのです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「大人になったら知っておきたいマネーハック大全」(フォレスト出版)など。http://financialwisdom.jp

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