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消えた中国の海外人材スカウト「千人計画」 その実情は

2018年の「千人計画」候補者を募るため、共産党中央組織部が出した文書のコピー

中国の海外高度人材招へいプログラム「千人計画」が関心を集めている。米当局が計画に参加した技術者を産業スパイ容疑で逮捕したり、日本では日本学術会議が計画に積極協力しているとの情報が流れたりした。これら情報の多くが不正確なことも判明しているが、理由の一つに中国のネットから千人計画の情報が消えてしまったことがある。

「申し訳ありません、関係する結果は見つかりませんでした」。中国最大の検索エンジン、百度(バイドゥ)に中国で使われる簡体字で「千人計画」と入力しても、こんな表示が現れるだけだ。公式ホームページばかりか、関連する情報が一切出てこない。

中国国外で運営されている華字サイトによると、今年4月末ごろに検索不能になっていたようだ。中国のネット上では断片的な情報さえ得られないので、消えた理由も問い合わせ先も調べようがない。

とはいえ、分析や批判をするには本来、その対象の公開情報を押さえておくのが基本中の基本だ。そこで、日本の専門家が印刷しておいた公式ホームページ上の基本情報などから計画の概要を再現してみた。

運営指針とみられる「海外高層次人才引進計画管理弁法」によると、責任部門は中国共産党の中央組織部。中央組織部は共産党の人事部に当たる組織で、約9200万人の党員を束ねる絶大な権限を持つ。党が重要視するプログラムであることは容易に想像がつく。

管理弁法の第二十九条は、計画に参加した専門家に思想的な指導を行う必要性を明記している。しかし、残る四十二の条文は招へいする海外人材の条件など実務的な内容ばかり。深圳市の「孔雀計画」など、地方政府の海外人材招へいプロジェクトと大差がない。

例えば、日本人の大学教授が該当する「外国専門家」には65歳未満、3年以上の勤務などの条件がある。ただ、「研究成果の知的財産は中国側に帰属する」など義務的な条項はなく、金融、舞台芸術、デザインなどテクノロジー以外の人材にも門戸を開いている。

米当局が指摘するように、産業スパイに関与した千人計画の対象者は多いのだろう。中国が政府・企業を挙げ、手段を問わず国内外で情報収集していることも間違いない。しかし、少なくとも公開情報からは、千人計画自体がその実行主体であるとは判断できない。

中国側は後ろめたさがないなら、千人計画の存在自体を隠す行為をやめるべきだ。海外側の疑心暗鬼を深めてしまう。関係者が事実に沿って、冷静に議論することを期待したい。

(アジアテック担当部長 山田周平)

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