マレーシア監督、多国籍化する日本を映画に - 日本経済新聞
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マレーシア監督、多国籍化する日本を映画に

「映画流れ者」を自称するマレーシア出身のリム・カーワイ監督は、大阪を拠点に日本とアジアの人たちの関係を描く劇映画を10年にわたり撮り続けてきた。最新作の「カム・アンド・ゴー」は「大阪3部作」の完結編で、先ごろ開催された東京国際映画祭の主要部門に選出され注目を集めた。「アジア各地を巡ってきたが、大阪は他のアジアの街に近い雰囲気がある。自分にとって親しみやすく、面白い街」と監督。今後も大阪で映画を撮る可能性があるという。

帰国を許されず職場を飛び出すベトナム人、日本風の弁当を器用に作るネパール青年、日本で出会い酒を酌み交わすようになる中国と台湾の観光客……。「カム・アンド・ゴー」にはアジア各地から大阪・キタを訪れた人たちが登場し、彼らの悲喜こもごもを群像劇として描いている。「東南アジアをはじめ、訪日する外国人が近年一気に増えた」ことが制作のきっかけだったという。期待を抱いて日本を目指した彼らに対して、日本人の登場人物には孤独の影が濃い。「核家族化に孤独死。人と人との関わり合いがあまりにもないように感じた」。監督が暮らしの中で実感した日本の姿でもある。

1973年生まれのリム監督は、大阪大学に留学。東京でエンジニアとして働いた後、30歳を過ぎてから中国の映画大学、北京電影学院監督コースに入学した経歴を持つ。「遅れて映画界に入ったため、経験を積まなければならない技術職は難しい。自分にできるのは監督しかなかった」と笑う。北京で自主制作した長編で監督デビュー。香港やバルカン半島などでも映画を撮ってきた。

大阪を舞台にした作品は日中関係の悪化に着目した「新世界の夜明け」(11年)が第1作で、続いて日本と香港、韓国の男女を主人公にした恋愛映画「FLY ME TO MINAMI 恋するミナミ」(13年)を制作した。「カム・アンド・ゴー」は台湾のリー・カンションのほか、日本からは兎丸愛美、千原せいじ、渡辺真起子らが出演。台本はなく監督がせりふを口伝えしたり、俳優と議論してせりふを考えたりして作り上げた。今後、一般公開を目指したいという。マカオ女性を主人公にバルカン半島で撮影した「いつか,どこかで Somewhen,Somewhere」(19年)は12月28日に東京・渋谷のユーロライブで上映後、21年1月に大阪と東京で公開予定だ。

(関原のり子)

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