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REIT最大手が急落 「季節外れ」増資に疑問の目

アイビー総研代表・関大介

日本株が大きく上昇する中、REIT(不動産投資信託)は上値の重い展開が続いている。日経平均株価は11月に入って一時3000円超上昇し、17日には29年ぶりに2万6000円台を回復した。その一方で、REIT全体の値動きを示す東証REIT指数は今年6月以降、1600から1800の間で推移しておりボックス圏を抜け出せていない。

国内最大手が突然に大規模増資を実施

膠着状態が続く相場で注目されたのが、REIT最大手の日本ビルファンド投資法人(以下、ビルファンド)の投資口価格急落だ。その引き金になったのは、大規模な増資。公募増資や第三者割当増資などで投資口数を計25万2000口増やした。これは、11月24日時点で市場に流通している総投資口数165万2500口の約15.2%に相当する。

ビルファンドをはじめとするオフィス型REITの投資口価格は、他のタイプに比べてコロナショックによる暴落からの回復が遅れている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って賃貸オフィスの需要が大きく減少することが懸念されているからだ。

ビルファンドは今年2月21日に10年来高値の89万6000円を付けた後に急落。3月19日には55万5000円まで下がった(下落率は約38.0%)。6月に70万円まで上昇する局面もあったが、9月以降は下落基調で推移していた。

こうした中、ビルファンドは10月9日に大規模増資を発表した。増資で調達した資金は、三井不動産から取得する新宿三井ビルディング(東京・新宿)、そしてグラントウキョウサウスタワー(東京・千代田)の区分所有持ち分(13.33%)の購入費用に充てる。三井不動産は、ビルファンドを運用する日本ビルファンドマネジメントの株式の46%を保有するメインスポンサー(筆頭株主)だ。

この発表を受けて、ビルファンドの投資口価格の下落に拍車がかかった。増資に伴って投資口数が増えて1口当たりの価値が下がる、いわゆる希薄化が嫌気されたからだ。10月29日には52万2000円まで下がり、年初来安値を更新した。この急落は他のREITにも波及し、オフィス型2位のジャパンリアルエステイト投資法人なども下がった。これがREITの全体相場を押し下げる一因にもなった。

決算期末の2カ月前という異例のタイミング

10月下旬に実施した公募増資などでビルファンドが調達した資金の額は、計1280億円。REITでは初めて1000億円を超えた。だが、REIT関係者が懸念したのは金額の大きさだけではない。増資の実施時期にも疑問の目が向けられた。

REITの増資は通常、決算期の初めに行われることが多い。希薄化が嫌気されて、増資の直後に投資口価格が急落しても、増資で取得した物件からの収益が加わって業績が拡大し、それを受けて反発すれば、増資後の下落分の回復が期待できるからだ。ところが、今回の増資が行われたのは決算期の初めではなく、決算期末の2カ月前という異例のタイミングだった。

6月と12月に決算期末を迎えるビルファンドの場合、次の決算期(21年6月期)がスタートするのは21年1月。ビルファンドが三井不動産から物件を取得するのは、同年1月8日の予定だ。増資の時期を21年1月に設定することは可能だったはずだ。

運用会社のスポンサーである三井不動産の意向によるものだろうか。REITの運用会社にとってスポンサーは資金面でサポートを受けるだけの存在にとどまらない。今回のケースのように、スポンサーが保有している物件を取得することも多い。

三井不動産が今回の2物件を売却したのは、都心部の再開発などで保有物件が増えたため、保有物件の一部を売却して現金を増やし、保有資産を圧縮する必要があったからだとされる。しかし、物件の取得には売り手であるスポンサーの事情が大きく反映されたとしても、増資を決算期末の2カ月前にしなければならなかった理由まで三井不動産側にあったとは考えにくい。

国内最大手の地位を早く取り戻したかった?

あえて理由を探ると、「ビルファンドのREIT最大手というポジションをできるだけ早く取り戻したかった」ことぐらいしか思いつかない。増資を実施する前まで、ビルファンドは時価総額で物流施設型の日本プロロジスリート投資法人に抜かれて2位に転落していた。さらに保有資産の規模でも、日本リテールファンド投資法人MCUBS MidCity投資法人が21年3月に合併して誕生する日本都市ファンドが上回る公算が大きくなっていた。

増資と新たに取得した物件によって、ビルファンドは時価総額と資産規模の両面で首位の座を取り戻すことができる。だが、これは21年1月に増資の時期をずらしても、その時点で達成できたことだ。2カ月ほどの差にもかかわらず、達成を急いだ理由は私には分からない。

先述のように増資が嫌気されて、ビルファンドの投資口価格は一段と下がった。だが、これは売られ過ぎだとみている。増資後の分配金が増える見通しであることに加えて、分配金を投資口価格で割って算出した分配金利回りは11月24日時点で3.85%と高い。急落時には4%を超える局面もあった。4%超えは、2012年7月以来だ。

下のグラフから見て取れるように、コロナ禍にあるとはいえ、現在のオフィスビルの賃貸市況は、12年7月当時と比べるとはるかに良好だ。空室率は約5.4ポイント低く、1坪(3.3m

2
)当たりの平均賃料は6000円余りも高い。足元の堅調ぶりを考慮すると、コロナ禍で先行きは楽観できないものの、ビルファンドの投資口価格はかなり割安だといえるだろう。

不動産投資信託(REIT)は、インカムゲイン狙いの投資家に人気のある投資商品。オフィスビルやマンションなどの不動産物件に投資し、賃料や不動産の売却益を得て、それらの収入から分配金を投資家に還元する。分配金を定期的に受け取るインカムゲインだけでなく、REIT自体の価格が上昇すれば、売却益によるキャピタルゲインを得ることもできる。この連載では最新動向をREITウオッチャーの関大介氏が解説する。
関大介(せき・だいすけ)
不動産証券化コンサルティング及び情報提供を行うアイビー総研代表。REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」(http://www.japan-reit.com/)を運営する。
[日経マネー2021年1月号の記事を再構成]

日経マネー 2021年1月号 会社員でもつくれる!老後資金1億円

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/11/20)
価格 : 820円(税込み)

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