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響け「歓喜」合唱団奮闘 年末「第9」演奏会

文化の風

合唱専用のマスクを着けて練習に励む大阪フィルハーモニー合唱団(大阪市の大阪フィルハーモニー会館)

師走の風物詩ともいえるべートーベン「交響曲第9番『合唱付き』」の演奏会。新型コロナウイルスの飛沫感染リスクが障害となって中止が相次ぐ中、合唱団員の数を減らして配置を工夫し実現を目指す動きもある。ベートーベン生誕250周年を締めくくり、「歓喜の歌」のメッセージを伝えたいとの思いからだ。

飛沫対策を徹底

関西の第9をけん引してきたのが大阪フィルハーモニー交響楽団だ。1970~90年代には年間10回以上演奏し、多い年は20回前後に達した。2000年以降も年6~7回のペースで公演している。今年は当初6回を予定していたが5回が中止に。12月29日、主催公演「第9シンフォニーの夕べ」のみをフェスティバルホール(大阪市)で開催する。福山修演奏事業部長は「創立名誉指揮者の朝比奈隆が繰り返し演奏してきた大フィルの中心的なレパートリー。ベートーベンイヤーでもあり、音楽の力で希望を与えたい」と話す。

10月に再開した専属合唱団である大阪フィルハーモニー合唱団の練習は飛沫対策もあって試行錯誤の連続だ。まず合唱団の数。通常なら120~130人だが100人に縮小した。それでも出演者を確保できるか不安だったが、ちょうど100人程度の希望者があった。本来肩を並べて歌う団員も左右は1メートル空け、前後も空席にする。本番ではソリスト(独唱者)4人は合唱団の前ではなく、オーケストラの前に立つ。

11月初め、大フィル合唱団の練習を見に行くと、歌っていたのはモーツァルト「レクイエム」だった。「声楽家の生理を超えた音符を書くベートーベンに対し、モーツァルトは無理のない発声で歌える。半年のブランクがある合唱団に栄養を与えてくれる」。こう説明するのは合唱指揮者の福島章恭氏だ。コロナ禍で練習できなかった合唱団の再始動にはうってつけの曲という。「自然で合理的な発声を心がけつつ、明確なディクションや和声の造形を踏まえた音楽性、テキストへの理解や共鳴が第9に欠かせない」と意気込む。

大阪城ホール(大阪市)で開く恒例の「サントリー1万人の第九」も規模を縮小。38回目の今年は12月6日、合唱団を1万人ではなく1千人で行う。大阪城ホールで実験を行い、飛沫を上昇気流に乗せて排出する効率的な換気法を編み出した。当日は合唱団全員に飛沫舞い上げ効果のある首かけ扇風機を装着させる。

2018年12月15日に行われた関西フィルハーモニー管弦楽団の「『第九』特別演奏会」(大阪市のザ・シンフォニーホール)(C)s.yamamoto

■人々をつなぐ歌

公演時間も短縮する。「1万人の第九」は通常なら約140分だが、今回はゲスト公演を短縮し、第9も第4楽章だけにして半分の約70分にする。兵庫芸術文化センター管弦楽団とひょうごプロデュースオペラ合唱団が12月11日に県立芸術文化センター(西宮市)で行う「開館15周年記念演奏会」も第4楽章のみだ。

合唱専用マスクも欠かせない。大フィル合唱団が使うのが東京混声合唱団が開発した「歌えるマスク」だ。両耳からかけた約30センチ幅の布を顎紐(あごひも)で結ぶ。中央の2本のプラスチック棒が布を浮かせ、違和感なく自由に口を動かせる。関西フィルハーモニー管弦楽団専属の関西フィル合唱団は、シーチングの内側に不織布を入れた石田洋服店(神戸市)の特製マスクを使う。

「歓喜の歌」のもとになったシラーの詩「歓喜に寄せて」には試練を乗り越えて真理にたどり着くという意味がある。それだけに各楽団・合唱団はコロナ禍の閉塞感打開へ願いを込める。「根付いている文化を途絶えさせない、第9の灯火(ともしび)を消さない」と話すのはひょうごプロデュースでインスペクターを務めるバリトン歌手の時宗務氏だ。「詩に込められた『ひとつになる』というメッセージの通り、一体感を感じられる歌を届けたい」。例年以上に熱い歌声が響きそうだ。

(浜部貴司)

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