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柳美里「居場所ない人のために書く」 全米図書賞受賞

全米図書賞(翻訳部門)を受賞した作家の柳美里(2018年、福島県南相馬市)

米国を代表する文学賞、全米図書賞の翻訳部門を、柳美里の長編「JR上野駅公園口」(英題「Tokyo Ueno Station」、モーガン・ジャイルズ訳)が受賞した。近年、英語圏で日本の女性作家は着実に存在感を高めており、柳の受賞はそれを象徴する出来事だといえる。

同賞の翻訳部門が復活した2018年には多和田葉子の「献灯使」が受賞、19年には小川洋子の「密(ひそ)やかな結晶」が最終候補に入った。今回の柳の受賞作は米タイム誌が選ぶ「20年に読むべき本100冊」にも入り、同リストには他にも村田沙耶香「地球星人」、松田青子「おばちゃんたちのいるところ」、川上未映子「夏物語」が選ばれている。

14年に河出書房新社から刊行された「JR上野駅公園口」は福島県南相馬市から東京に出稼ぎにやってきた男性が主人公だ。ホームレスとなった彼は上野公園をさまよいながら、過去を振り返る。

柳は11年の東日本大震災、福島第1原発事故の後、自宅のあった神奈川県鎌倉市から南相馬市に通い、15年に同市に移住、18年からは自宅で書店を営む。19日に記者会見した柳は「最終候補入りが報道されると、お店に来る方々が『受賞できるといいね』と声をかけてくれた。『JR上野駅公園口』を書くに当たっても南相馬の人々に話を聞いた。『おらほの物語』と言ってくれる地元の方々の期待に応えられたのがうれしい」と喜びを語った。

海外で評価された理由については「新型コロナウイルスの感染拡大で『ステイホーム』が叫ばれたが、必ずしもホームが居場所にならない人もいる。それは国境を越える普遍的な問題だと感じてもらえたのではないか」と分析。「小説や戯曲を書き続けて30年以上になるが、私は一貫して居場所のない人々のために書いてきた。それはこれからも変わりません」ときっぱり述べた。

(中野稔)

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