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藤田嗣治は「手芸男子」愛した布から素顔に迫る展覧会

藤田嗣治「五人の裸婦」(1923年、油彩、カンバス、東京国立近代美術館蔵)(C)Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2020 G2384

20世紀エコール・ド・パリの画家、藤田嗣治は、画中に布地を繰り返し描き、好んで針仕事をする「手芸男子」だった。福岡市美術館で12月13日まで開催中の「藤田嗣治と彼が愛した布たち」展は、絵画と布地、自作の小物類などを並べ、布を通して藤田の画業を再考する。

まず目を引くのは藤田のトレードマーク、乳白色の裸婦像の背景に登場するフランスの更紗(さらさ)の「ジュイ布」や木綿地だ。画中のジュイ布は銅版の細かい描写をそっくり再現している。花柄の木綿地は畳んだときにできる折り筋まで描き込んだ。こうした質感の丁寧な描写が独創的ととらえられ、一躍人気画家になる。布地は藤田が「オンリーワンの存在になるために有効な武器だった」と岩永悦子館長は指摘する。

茶道具の文様が入った筒描(つつがき)の大型の布は特別な一枚だったようで、日本に帰国中の1930年代後半の自画像などに登場する。本展では実物の布地も展示。自画像と比較すると画中の布がほぼ実物大に描かれていることに気付く。「絵の主役は、この渋い藍色地の日本風の布なのだ」。そう思っていたのかもしれない。

藤田嗣治「菊唐草文様袢纏」(年代不詳、木綿、メゾン=アトリエ・フジタ、エソンヌ県議会蔵)

藤田が愛蔵していた布や手作り品はフランス・エソンヌ県のメゾン=アトリエ・フジタが所蔵する。新型コロナにもかかわらず今回、約50点が出品された。表に日本的な文様、裏に鮮やかなストライプ地の布を組み合わせた袢纏(はんてん)、藍の型染めで仕立てたシャツ、夫人とおそろいで作ったと思われるマスク。多くが日本初公開だ。

「芸術家は芸術を身にまとうべし」と考えた藤田は旅先の南米などで民族衣装にも目を向けた。「つるしの既製服をそのまま着ることをよしとせずにカスタマイズする人だった」と岩永館長。描くことも手縫いすることも、どちらも藤田の大切な創作だったのだろう。

(窪田直子)

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