イランで高性能の遠心分離機が稼働 IAEAが指摘
【ウィーン=細川倫太郎】国際原子力機関(IAEA)は18日、オンライン形式で定例理事会を開催した。グロッシ事務局長は記者会見で、イランが中部ナタンズの核関連施設の地下に移設した高性能の遠心分離機を稼働させたと明かした。イランは核合意からの大幅な逸脱を続け、国際社会の緊張が高まっている。
遠心分離機はウランを濃縮する装置。今回の高性能機は旧式に比べ数倍の濃縮能力を持つとされる。核合意ではイランが使える遠心分離機は旧式のみ認めており、規定違反となる。グロッシ氏は「(イランは)より多くの濃縮を続けている」と指摘した。ただ、イランは以前から別の場所でも使用していたため、製造量が急激に増えることはないとの見解も示した。
また、グロッシ氏は理事会の冒頭、イランの未申告の施設からウラン粒子が検知されている問題で、「完全で迅速な説明が必要だ」と強調した。この施設は過去に秘密裏に核開発を進めていたのではとの疑惑が出ている。安全性の懸念が払拭できていないとし、イランに説明を求めた。
トランプ米政権は2018年に核合意から一方的に離脱し、イランに対する経済制裁を再開した。イランはこれに反発し、低濃縮ウランの貯蔵量を規定より大幅に超過させるなど核合意からの逸脱を繰り返してきた。
米大統領選で当選を確実にしたバイデン前副大統領は核合意への復帰を目指している。欧州連合(EU)は声明でイランが「完全に核合意へ戻るよう強く求める」と強調した。グロッシ氏は18日の会見で、現時点でバイデン氏と連絡は取っていないと述べた。