デンマーク農相が引責辞任 ミンク殺処分巡り
【ロンドン=佐竹実】デンマークのモーンス・イエンセン農相は18日、ミンク殺処分を巡る混乱の責任を取って辞任した。ロイター通信が報じた。デンマーク政府はミンクから新型コロナウイルスの変異種が確認されたことを受けて殺処分を命じたが、法的根拠がないことが後に発覚し、野党が反発していた。

デンマーク政府は4日、北部の農場で見つかった変異種が人にも感染したとして、国内の全ミンクの殺処分を農家に命じた。同国は世界最大のミンクの毛皮の産地で、約1100の農場で1500万~1700万匹が飼育されている。
政府はこれまでに5種類の変異を確認し、そのうち1つは抗体に対する反応が弱かったという。フレデリクセン首相は「ミンクのウイルスの変異は、将来のワクチンの効果を危機にさらすかもしれない」と殺処分を決めた背景を語った。
だが、後にこの命令に法的根拠がないことが発覚し、政府は10日に謝罪に追い込まれた。すでに数百万匹が処分されており、農家や野党から反発の声が強まった。地元報道によると、政府は命令を撤回して勧告にとどめ、2021年までにペット以外のミンクの飼育を禁止する法案を新たに提出した。
ミンクへの感染はオランダやスペインなどでも確認されているが、ウイルスが変異すること自体は珍しくないという。世界保健機関(WHO)で新型コロナの技術責任者を務めるマリア・バンケルコフ氏は「人からミンクにうつりまた人に戻ったとみられるが、変異は普通のことだ」と指摘している。