Apple、アプリ配信手数料下げ 中小向け15%に半減

ネット・IT
北米
2020/11/18 20:02 (2020/11/19 5:18更新)
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中小規模のアプリ開発事業者への負担を軽減し、開発継続を支援する

中小規模のアプリ開発事業者への負担を軽減し、開発継続を支援する

【シリコンバレー=白石武志】米アップルは18日、有料アプリ開発者に課している30%の配信手数料について、中小事業者向けを2021年1月から15%にすると発表した。高額との批判が米議会などから出ており初の引き下げに踏み切る。約2800万社にのぼる開発者の負担軽減につながるがアプリ審査の不透明感や課金手段をアップルが独占する課題は残る。

アップルはソフト配信基盤の「アップストア」を使う開発者に対し、売り上げの30%をアプリ配信手数料として徴収している。今回、20年のアプリ販売額合計が100万ドル(約1億400万円)以下の企業についてはこれを半額とすることを決めた。21年から新規にアプリ販売を始める企業も軽減対象とする。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は同日、「小規模事業者がアプリ開発に継続的に取り組むことを支援するものだ」との声明を出した。

アップストアをめぐっては基本ソフト(OS)で高いシェアを握るアップルが取引先に不利な条件をつきつけているとの声が出ている。

米国では議会などが反トラスト法(独占禁止法)違反をめぐり調査中。人気ゲーム「フォートナイト」の開発元である米エピックゲームズも硬直的な手数料が反競争的だとして8月にアップルを相手取った訴えを起こした。あつれきは米国外でも起きており、菅義偉首相は官房長官時代の19年末に訪日したアップルのクックCEOに「中小企業の間で不公正な取引実態を生んでいる」と是正を強く促した。

アップルは一部とはいえ減額措置を打ち出すことで批判の拡大を抑える狙いもあるとみられる。

アプリ配信の世界では有力企業の影響力が強く、上位1%の企業が全世界で公開されているアプリの総ダウンロード数の80%を占めるとの調査結果もある。アップルは今回の値下げの対象となる開発者数を明らかにしていないが、アップストアを使う2800万社の大部分が該当するとみられる。日本では数千社が対象になるもようだ。

アプリ開発者は手数料減額を歓迎する。都内で複数のアプリを個人開発する20歳代の男性は「負担が軽くなる」と喜ぶ。

一方で配信するアプリの選定は依然としてアップルの裁量に委ねられている。ある中小の開発企業は「アップルのアプリ審査は厳格さで知られるが、承認を得られない理由が不明確なこともあった」と話す。米議会ではアップルがアプリ審査を通じて競合を抑えつけているとの懸念がくすぶる。

課金もアップストア経由でなければできない。エピックはゲームで独自課金をしようとしたところ、アップルによって配信を止められた。国内スマートフォンゲーム大手の幹部は「手数料は(アップストアにとどまり)消費者との接点をもつための必要経費だ」と話す。

アプリ登録の審査やOSのアップデート対応などでコストもかかる。ある国内メーカー大手は「大々的に宣伝をしないとダウンロードされないのでアプリ開発をやめた」という。

アップルは08年にアップストアのサービスを始めた。世界に15億台以上普及したアップル製品にゲームや音楽・動画配信など約180万種類のアプリを流通させる唯一の基盤だ。アプリを介した物販やサービスを含め、アップストア上で生み出された売上高の合計は19年に5190億ドル(約54兆円)に達したという。

モバイルOSの市場でアップルとシェアを二分する米グーグルも30%のアプリ配信手数料をとっている。同社は価格見直しの方針を示していないが、9月に次期OSから外部企業によるアプリ配信サービスの開設を容易にすると発表した。IT(情報技術)大手に強まる規制当局や取引先からの風圧が、アプリ配信の市場構造に変化をもたらしつつある。

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