須川展也、バッハのバイオリン・パルティータを吹く

日本のサクソフォン界で注目を集める須川展也が、バッハの無伴奏バイオリン・パルティータを演奏したアルバム「バッハ・シークェンス」を発表した。子どもの頃から憧れていたという第2番の終曲シャコンヌを含む全3曲を自ら編曲し、楽譜も出版した。「バッハの音楽は身近だよ、というつなぎ役になりたい」と意気込む。
サクソフォン演奏への編曲にあたり、名バイオリニストの録音をたくさん聴いた。巨匠ハイフェッツやグリュミオーのほか、最近では五嶋みどりやテツラフらの演奏だ。「すごい演奏を聴くと、サックス吹きがバイオリンの大名曲をやるなんておこがましいという思いも湧いた」と振り返る。
サックスはクラシックでは新しい楽器といえ、1840年ごろに登場した。バッハが活躍したのは18世紀で時代が異なるが「彼は管楽器に近いパイプオルガンの名手だった。心臓の近くで弾くバイオリン奏者でもあったので、サックスの登場を予見していたのでは」とみる。
タイトルの「シークェンス」とは、同じ音形を音高を変えて繰り返す反復進行を意味する。バッハがよく使った作曲技法で、現代ではジャズやポップスでも一般的だ。「ジャズのサックスは見事にアドリブしまくっている。サックス吹きの僕がバッハを演奏するのは必然ではないか」
「多くの人に吹いてもらいたい」との思いから、出版した楽譜は一部のフレーズを演奏しやすくしてある。「サックスはアカデミックにも語れるだけでなく、気楽に吹いたり聴いたりできる。ドラえもんのポケットみたいな楽器として楽しんでもらいたい」と話す。26日には紀尾井ホール(東京・千代田)で公演を開く。
(西原幹喜)