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アリババ好調も株価下落、高まる中国の民間統制リスク

中国アリババ集団は今年の「双11」セールで前年を8割以上上回る取扱高を達成した
日経ビジネス電子版

4982億元(約7兆9300億円)ーー。11月12日に日付が変わると同時に、派手なスモークがたかれ、プレスセンターの巨大スクリーンに数字が大写しにされた。中国アリババ集団が11月11日(独身の日)に仕掛ける年間最大セール「双11(ダブルイレブン)」の、今年の取扱高実績である。

2019年実績は2684億元だったので、今年は実に約8割の積み増しを達成したことになる。例年11月11日の1日のみをセール日としていたのを今年は11月1~3日と11月11日の2回とし、セール対象期間を拡大した影響はある。だが、同時にセールを展開した京東集団(JDドットコム)のセール期間中(11月1~11日)の取扱高も前年同期比32.8%増の2715億元を記録した。アリババと合わせてアフターコロナの中国における旺盛な消費意欲を裏付ける結果となった。

それにもかかわらず11月11日当日に取材に訪れたアリババ本社(杭州市)に、史上最高額を打ち立てつつある企業の熱気は感じられなかった。新型コロナウイルスの影響で、海外から中国に来るメディアの人数が少なかった影響だけではない。記者会見における質問は通常より厳しいものが目立ち、それに応じるアリババ幹部のコメントも抑制された言い回しに終始。回答やコメントを避ける場面も見受けられた。それは、アリババを取り巻く環境がにわかに険しさを増していることを映し出したものだろう。

「株価も大セール」

「株価も双11セールだ」。中国メディアには、こう論評する記事があふれた。年間最大のセールが成功を収める中、アリババの株価(香港市場)は下落を続け、11日の終値は前日比で9.8%下落した。騰訊控股(テンセント)や京東集団など中国ネット大手の株価も軒並み下落した。

ビジネスが堅調であるにもかかわらず株価が下がったのは、中国のネット企業をめぐる最も重要な経営環境が変化したことを嫌気したからだ。これまで比較的良好な関係を保ち、アリババなどネット企業を「優遇」して成長を促す姿勢を見せてきた中国政府が一転、統制を強化し始めたのだ。

「双11」前日の11月10日、中国の国家市場監督管理総局はネット企業の独占的な行為を規制する「プラットフォーム企業の経済領域での独占禁止ガイドライン」を公開した。中国国外ではGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる米国のプラットフォーマーの寡占による問題があらわになっている。中国でもアリババや騰訊控股などのネット大手による寡占が進み、優越的地位を築いたことによる弊害が指摘されるようになっている。

19年6月には、電子レンジ世界最大手の格蘭仕(ギャランツ)とアリババの衝突が話題を集めた。ギャランツはアリババから、アリババの競合である共同購買サイトの●(てへんに併のつくり)多多(ピンドゥオドゥオ)からの撤退を求められたが、これに従わなかった。するとアリババの通販サイト「天猫(Tモール)」でギャランツを検索しても表示されない状態となった。ギャランツはTモールでの売り上げを大きく落とし、抗議声明を発表した。その後、アリババは再びギャランツのTモール上での検索を可能にしている。ファーストリテイリング傘下のユニクロが15年に京東集団から3カ月で撤退した際も、アリババの圧力があったのではとの指摘が出た。

中国当局が、これまで時間をかけてこうした優越的地位を持つプラットフォームへの規制を検討してきたことは間違いない。そのガイドラインの発表日を狙いすましたようにわざわざ「双11」前日に持ってきたことに、強いメッセージ性が含まれている。

アリババをめぐっては11月5日に予定されていた傘下の金融会社、アント・グループの上場が直前になって当局の介入によって中止された。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、習近平(シー・ジンピン)国家主席がアリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏の当局批判ととれる発言に激怒して、直接、上場延期の判断を下したと伝えている。事実関係を確認することは困難だが、いったん正規プロセスで許可されたことでも政府の判断で一気に覆ることがあるという、不確実性リスクが顕在化した事例であることは間違いない。

民間企業経営者の恣意的逮捕なのか

日本ではほぼ報じられていないが、11月11日には中国の著名経営者、孫大午氏が警察に逮捕された。地元政府から借りている土地をめぐる争いがあり、一部暴力沙汰も生じたようだが、詳細は明らかにされておらず、中国ネット上で議論が巻き起こっている。

河北省の養鶏会社の創業者である孫氏は03年、違法に資金を集めた罪に問われ、実刑判決を受けた事件で有名になった。金融機関から融資を受けられなかったことから地元で資金を集めていたことが違法と指摘されたのだ。中国メディアの「南方週末」は当時、袖の下(賄賂)などの不正を嫌い、清貧を貫いて収益を学校や病院の建設に投じていると人物像を伝えている。同様の資金調達は農村部で日常的に行われていたものだが、不当な要求に応じない孫氏が地元政府からにらまれていたことが当時の恣意的な逮捕につながったとの指摘もある。こうした経緯から、今回の逮捕についても中国のネット上では「きちんと事実関係を説明してほしい」など、孫氏を応援するコメントが目立つ。

習指導部は「民営経済(国有企業ではない企業)に携わる人たちを党の周囲に団結させる」との方針を掲げている。プラットフォーマーの寡占の問題については他国ならもっと早い段階で規制が入っていた可能性が高く、その意味では中国でも適切な規制をかけることは今後の経済全体にとってプラスの面はある。

ただし中国では政府が絶対的な力を持っているのが現実だ。規制を恣意的に運用すると見られれば、民間企業の経営における不確実性は増し、活力は失われる。中国政府が掲げる内需に軸足を置きつつ外需も取り込もうとする経済政策「双循環」の根幹部分に影響しかねない。

(日経BP上海支局長 広岡延隆)

[日経ビジネス電子版 2020年11月18日の記事を再構成]

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