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ニコン、リストラ着手に潜むIntelリスク

ニコンがグループ全体の1割にあたる2千人の人員削減に乗り出す。かつて稼ぎ頭だったカメラ事業の低迷が主因だが、背景には主力の一つの半導体製造装置事業の主要顧客である米インテルの不振がある。かつて半導体装置の世界シェアが首位だったニコンだが、今や7%ほど。米エヌビディアが時価総額でインテルを抜くといった半導体業界の構造変化の影響が出始めている。

装置の7~9割がインテル向け

「ニコンが半導体関連の製品で安値攻勢をかけている」。半導体の業界では最近、こんな話がささやかれている。証券アナリストによるとニコンが販売する半導体装置の7~9割がインテル向けだ。インテル偏重を改善するため、低価格で新規顧客を開拓しようと躍起になっている。

中国などの半導体メーカーが売り込み先とみられている。ただ、ニコンの馬立稔和社長は11月に「新型コロナウイルスの影響で新規顧客の開拓が想定より進まなかった」と話し、簡単にはいかないとの厳しい見方を示した。

ニコンは半導体を手がける国内電機メーカーとともに装置メーカーとして成長してきたが、2000年代に電機大手が相次ぎ半導体事業から撤退したり、縮小したりした。その結果、相対的にインテルとの取引比率が上昇。02年にニコンが経営難に陥ったときは、インテルが転換社債を引き受ける形で開発費100億円を負担した。ただここにきて、その蜜月ぶりが裏目に出てきている。

半導体の最先端技術に対応できず

実際、11月に開いた決算説明会では4~9月の半導体製造装置の販売が9台と、前年同期から半減したと明らかにした。ニコンはインテルを念頭に「半導体露光装置は主要顧客の投資一巡の影響もあり、販売台数は大幅に減少」と説明。馬立社長は「半導体は厳しい局面が到来しており、主要顧客の動向次第では事業運営を機動的に見直す必要がある」と漏らした。

さらに深刻なのは今後、伸びるとみられる分野で力不足なことだ。最先端の半導体では基板に回路を転写する工程で「EUV(極端紫外線)」と呼ばれる技術に対応した装置が必要だが、ニコンはこの装置の開発から撤退した。開発コストが大きかったことが要因とみられ、ニコンは「当時の経営判断で経済合理性が成り立たないと考えた」としている。

この製造装置は、最大手であるオランダのASMLだけが商用化に成功している。インテルもASMLから調達した。ただ、新しい製造ラインの確立に時間がかかっているとされ、インテル自身も競争力を失いつつあるとの声が出ている。

7月23日にはインテルのボブ・スワン最高経営責任者(CEO)が、これまでは自社工場で生産してきた半導体を、受託大手に頼ることを検討すると表明。時価総額でインテルを抜いたエヌビディアが設計や開発に特化し、工場を持たずに委託するモデルで成功しているのを意識している。

ただ、インテルが自社工場での生産を減らせば、ニコンの半導体装置の販売減に直結するとみられる。そうした懸念材料も背景にニコンの株価はスワン氏の発言後、11月19日の終値(701円)までに23%下げた。同じ期間に日経平均株価が13%上昇する中で、大きく売られた格好だ。

16年3月期に8400億円強あったニコンの連結売上高は、21年3月期にほぼ半分の4300億円に減る見込み。5200億円あったカメラなどの映像部門が1400億円に落ち込むのが主因だ。21年3月期の営業損益は映像部門が450億円の赤字となる見通し。4つある事業部門のうち、営業黒字を見込むのは半導体や液晶パネルの装置の部門だけで、その額も10億円にとどまる。

半導体の生産工程で、基板に回路を転写する「ステッパー」と呼ぶ装置の市場でニコンと競ってきたキヤノンと比べても不利な状況にある。両社はパネル向けの露光装置ではシェアを二分するが、その後の工程で使う有機ELパネル向けの蒸着装置はニコンは手がけておらず、キヤノン子会社が世界シェアで首位とみられている。

キヤノンは一眼レフカメラから顧客が流れたミラーレスの開発や販売でも先行。新規事業の開拓も熱心で、15年に買収したスウェーデンのアクシスコミュニケーションズをテコに法人向け監視カメラ事業を拡大させている。商業印刷や医療など、事業ポートフォリオの見直しが進んでいる。

カメラ事業で人員削減

半導体装置を巡っては、米国による半導体の輸出規制により、中国が半導体の内製化を急いでいるため「中国の半導体メーカーにニコンが食い込む余地がある」(業界関係者)との見方もある。装置の新規顧客の開拓だけでなく、既存の装置の保守サービスや、EUVなど幅広い半導体製造ラインに使える検査機器といった装置周りのビジネスも積極的に拡大する戦略を描く。

11月5日に発表した構造改革案は、カメラは国内生産をやめてタイに集約し、販売人員を削減して同部門の事業運営費を630億円減らす内容だった。プロや趣味層に絞って規模を縮小しても利益を出せるようにし、21年度の黒字化を目指す。従来の主力事業に大きく切り込んだ形だが、苦しい構図の半導体装置事業や、新規事業を伸ばすことができなければ、今回の改革は時間稼ぎにとどまる懸念もある。

(橋本剛志)

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