ドイツ取引所、議決権助言の米ISS買収 ESG情報を強化

【ロンドン=篠崎健太】ドイツ取引所は17日、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)を買収すると発表した。株式価値を22億7500万ドル(約2370億円)と評価し、80%を取得する。ESG(環境・社会・企業統治)に関するデータの需要が高まるなか、ISSを傘下に収めて情報事業を強化する。
ISSは1985年創業の投資情報会社で、業績や企業統治などを分析して議決権行使の判断を助言するサービスを手掛けている。近年はESG関連の情報事業に力を入れ、評価会社の買収なども進めてきた。年金基金やヘッジファンドなど4千超の顧客基盤を持つ。
ドイツ取引所のテオドール・ワイマー最高経営責任者(CEO)は「将来、世界の主要なESGプレーヤーになるための補完的な要素を持っている」と述べ、買収によるESG事業の拡充に期待を示した。
ドイツ取引所は傘下に、株価指数のDAXやストックスなどを運営する情報サービス会社のコンティゴを持つ。株価指数の開発でもESGに力を入れており、ISSを迎え入れることで相乗効果を図りたい考えだ。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースで、2023年までに1500万ユーロ(約19億円)のプラス効果を見込む。
ISS株は米プライベート・エクイティ(PE)ファンドのジェンスター・キャピタルから取得する。ジェンスターは残りの20%を引き続き保有する。買収は規制当局の認可を前提に21年前半に完了する計画だ。
世界ではESG評価会社へのM&A(合併・買収)が相次いでいる。米金融情報会社ファクトセットは10月20日、ESG評価会社の米トゥルーバリュー・ラボの買収を発表した。英ロンドン証券取引所グループが競争当局の認可を待つ情報会社リフィニティブ・ホールディングスの買収も、狙いのひとつにESG分野の強化がある。