NTT社長「アイオンでゲームチェンジ」 技術説明会で

NTTは17日、研究開発の展示会「R&Dフォーラム」をオンラインで開き、開発を進める次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」の活用を想定した医療分野やスマートシティーなどの取り組みを紹介した。同日にはNTTドコモのTOB(株式公開買い付け)成立も発表しており、グループを挙げて研究開発に力を注ぐ構えだ。

「NTT R&Dフォーラム2020」では20日までの4日間で83の取り組みを公開する。会場にはNTTの自社メディア「ドア」を使っている。オンライン上に3次元(3D)空間を再現し、アバターを操作して会場を回る。ビデオ会議システムでNTTの研究員に質問することもできる。
アイオンは光技術を活用した次世代通信基盤だ。登壇したNTTの澤田純社長は「ドコモを強くすることで、アイオンを通じて日本、世界を豊かにする営みを推進したい」と力を込めた。アイオンは既存の通信より高速で低遅延なのが特徴で、2時間の動画1万本を0.3秒でダウンロードできるデータ伝送を可能にする。大量のデータを消費電力を抑えながら処理し、スマートシティーの実現などにつながるという。
心身の状態をデジタル化する構想も発表した。心音や血糖値などの生体情報や歩数といった生活に関わる大量のデータを収集し、デジタル空間に身体の状態を再現した「バイオデジタルツイン」を作る。これを使って健康状態や投薬の副作用をシミュレーションし、個人に合わせた治療や予防の提供につなげる。21年度にはコンソーシアムなどを設立する予定だ。
核融合炉の制御にアイオンを活用する取り組みを紹介した。核融合は太陽と同じ状態を地上で再現する技術だ。膨大な観測データをリアルタイムで分析し、炉内の状態を調整する必要がある。NTTは国際熱核融合実験炉(ITER)や量子科学技術研究開発機構と協業し、アイオンの実用例を積み上げていく。
新型コロナウイルスの影響を受けて変わり続ける消費行動に合わせた研究開発も展示した。
NTTとソニーはスポーツの遠隔観戦を盛り上げる「観戦アシストシステム」の開発を進める。スポーツの試合を自宅で観戦する人の動きや姿勢を部屋の天井に設置したセンサーで感知し、観戦者の高揚に合わせてプロジェクターの映写や音などで歓声を再現する。高速通信技術で他の観戦者の様子も解析して送信し、離れたところで観戦する人同士で一体感を醸成できるという。
NTTは研究開発の体制を整えるために、相次いで手を打っている。TOBが完了したドコモに加えて、6月に資本業務提携を発表したNECともアイオン構想の実現に向けて共同開発に取り組んでいく方針だ。
(平岡大輝)