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「ビワイチ」感動発見の旅 藤本芳一さん

関西のミカタ 輪の国びわ湖推進協議会会長

ふじもと・よしかず 1965年兵庫県生まれ。20代半ばから自転車の旅で国内47都道府県、海外50カ国を走破。本業は印刷物やウェブのデザイナー。サイクリングマップ制作に精通。輪の国びわ湖推進協議会に発足から関わり、2015年会長就任。

■日本最大の湖、琵琶湖は滋賀県の面積の6分の1。自転車で湖岸を一周するコースは全長193キロに及び、愛好者は「ビワイチ」と呼ぶ。県の推計によると体験者は年間10万人以上。自転車の利用促進に携わる県内の市民団体や企業などでつくる「輪の国びわ湖推進協議会」の会長、藤本芳一さん(55)は、「一周認定証」の発行などでその人気を後押ししてきた。

ビワイチ人気の背景はいろいろある。まずサイクリストはとにかく「一周」が好きで、湖や島があると一周したくなる。もっと規模が大きくなると日本一周、世界一周とか。目標として分かりやすく人にも説明しやすい。関西の愛好者の中では、琵琶湖を一周できたら一人前という雰囲気が昔からあった。子どもの時に挑戦した人も多いと思う。

約200キロという距離は挑戦しがいがあるが、湖岸道路の東側は走りやすく、コース全体も北部以外はほぼ平たん。初心者も頑張れば達成できる。JRがぐるっと周りを走っているので、いざとなれば自転車を輪行袋に入れて乗車し、ショートカットも途中でやめることもできる。

輪の国びわ湖推進協議会は2009年に発足。自転車に乗る人を増やし、より良い環境、健康のある滋賀をつくるために、ビワイチから自転車の良さを知ってもらおうと活動してきた。県も15年ごろからビワイチによる観光・地域振興に力を入れ、19年には国のナショナルサイクルルートに選ばれた。その中で標識や自転車レーンなど安全面のインフラ整備もさらに進んだ。

■自転車の旅の良さは道行きでの発見。特に旧街道には味わいのある歴史や文化、街並みがあり、関西は資源に恵まれているという。

普通の旅は観光地、ホテル、買い物という「点の旅」。だが、自転車は目的地というより、走っていく行程に意味がある。途中で小さな集落を通り、観光地ではないが景色が良い場所、趣のある古い街並みなどを見ながら走る。その土地で暮らす人々と話すのも楽しく、峠越えの眼下の光景やダウンヒルも気持ちいい。ビワイチでは賤ケ岳(長浜市)の旧道トンネルを抜けると奥琵琶湖の絶景が見える。まさに自転車の旅ならでは。

最近、注目を集めているのは旧街道の自転車の旅だ。先日は福井県小浜市から京都まで「鯖(さば)街道」を走った。旧街道は現在は幹線から外れた裏道だが、車が少なくて走りやすく、昔の街並みが残る宿場町などもある。

関西はかつての日本の中心であり、京都や奈良を中心に旧街道も多い。実際に走ってみた印象でも歴史資産は関東より豊富だ。東海道や中山道の旧道の宿場町を観光資源として再生した場所は、滋賀県だけでも草津宿(草津市)、守山宿(守山市)、石部宿(湖南市)、土山宿(甲賀市)などそれなりにある。他府県の京街道、紀州街道、大和街道なども見どころは多い。

■自転車の旅を観光振興につなげるサイクルツーリズムに注目が集まっている。

淡路島を一周する「アワイチ」も人気のコースだという

関西ではビワイチのほか、淡路島(兵庫県)を一周する約150キロの「アワイチ」も人気だ。サイクルツーリズムは日本各地で取り組まれているが、関西の各府県は特に熱心にコース整備やマップ作りを進めている。滋賀、三重の両県をまたぐ伊賀と甲賀の忍者の里のコースを作ろうという動きもある。

新型コロナウイルスの感染拡大で、自転車は密にならないということで期待され、実際に乗る人も増えている。観光コンテンツとしての期待も大きいが、一方でインバウンド(訪日外国人)がいなくなり、ガイドが案内するサイクリングツアーなどの利用者は激減したと聞く。日本にも長期休暇をとる習慣が根付き、ドイツのようにゆっくり旅を楽しむようになればと願う。

(聞き手は影井幹夫)

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