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キャッシュレス不正対策、「使わないから安心」は誤解

キャッシュレス決済(上)

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ある日の筧家のダイニング。晩ご飯前のひととき、幸子と満がくつろいでいると、良男が仕事から帰ってきました。洗面所で手洗いやうがいを終えるや、まっすぐ2人の方へ向かってきます。何やら聞いてもらいたい出来事が帰宅途中にあったようです。

筧(かけい)家の家族構成筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

良男 帰りにコンビニに寄ったら僕よりずっと高齢の男性がスマートフォンのアプリで買い物していたんだ。珍しいよな。

 驚くことかな。僕も昨日、お年寄りがスマホ決済を使っているのを見たよ。

良男 そうかな。日本は現金大国。僕より上の世代はみんな現金派だと思っていたけど。

幸子 キャッシュレスは高齢層にも浸透し始めたかも。クレジットカードや電子マネーなどを合計したキャッシュレス決済額は2019年に約82兆円で、消費支出のキャッシュレス率は26.8%という推計もあるの。

 最近は新型コロナウイルス感染を心配して現金を触るのを敬遠する人もいるようだね。

幸子 コロナ禍と因果関係はわからないけど、確かに今年もキャッシュレス決済は堅調ね。総務省の家計消費状況調査で、「Suica(スイカ)」など電子マネー利用世帯の平均額は20年7~9月期に前年同期比約17%増だったわ。キャッシュレス推進協議会によれば、スマホにQRコードやバーコードを表示して買い物する「PayPay(ペイペイ)」などコード決済も拡大しているようね。

良男 コード決済はあまりに種類が多く、選べないでいるうちに僕は乗り遅れたな。

幸子 コード決済だけがキャッシュレスではないの。全体の規模ではクレジットカードが大きい。銀行のキャッシュカードを決済に使うデビットカードもある。決済などの動向に詳しいポイ探代表の菊地崇仁さんに初心者にオススメのキャッシュレスを聞いたら「基本はクレジットカードかデビットカード1枚でいい。あとは交通機関で使うための電子マネーを併用するくらいで十分」と教えてくれたわ。

 多くの決済手段を使い分けた方が得だと思っていたな。

幸子 菊地さんによれば、コード決済は18年末にペイペイが大規模キャンペーンをした後、ポイントなどの還元競争が続いたけど、最近は沈静化しつつあるんだって。期間限定キャンペーンなどを除くと、常時受けられる還元率は0.5%程度が大半になり、0%の例も増えたらしいの。一方、クレジットカードの通常還元率は0.5~1%はあるので、無理をしてコード決済を始める必要性は薄いわ。限定キャンペーンなどを調べてお得な決済を選ぶのが好きな人もいるけど、決済手段を多くすると管理の手間も増えそう。

良男 クレジットカードは持っているけど、少額の買い物で使うのは少し抵抗がある。

 最近はそうでもないよ。コンビニやスーパーで数百円の買い物をする時でもクレジットカードを使う人を見かけるね。クレジットカードもレジにある機械へかざすだけで支払いが済むサービスも増えたよ。

良男 今年秋には「ドコモ口座」などの不正利用が話題になっただろ。キャッシュレスだと、そういう被害に遭いやすいよ。

幸子 それは少し違う。ドコモ口座などの不正は、キャッシュレス決済をしていなかった人が被害者の中心だったし。スマホなどを使うキャッシュレス決済は銀行口座やクレジットカードを登録しての利用が多い。口座やクレジットカードの情報を不正に取得されると、自分では使ったこともないキャッシュレス決済にその情報を勝手に登録され、使い込まれてしまうの。18年末に起きたペイペイの不正利用でもやはりペイペイを使ってない人が被害を訴えたわ。

 キャッシュレス決済を使わないから、安心というわけでもないんだね。

幸子 その通り。もちろん全く使わないなら、クレジットカード情報などが流出するといった可能性は低下し、相対的に不正に遭うリスクが下がる面はある。一方、利用しないことで安心して銀行口座残高の定期的なチェックなどを怠ると、不正被害に気がつかない恐れが大きくなるの。キャッシュレス決済を使わなくても、最低限の関連知識は身につけたいところね。

良男 例えばどんなこと?

幸子 まずはドコモ口座不正のように、利用していないキャッシュレス決済を通じ、自分の口座から出金される恐れがあることは知っておく。その上で口座残高やクレジットカード明細は「不正があるかも」という前提でこまめに確認する。ちなみにキャッシュレス決済を既に利用中の人から「口座登録をしないで、ATMなどで現金チャージ(入金)のみにして使っている」という不正対策を聞いたわ。一定の効果はあるけど、口座管理がずさんなら結局、使っていないキャッシュレス決済に不正登録される心配は残るわね。

 無関心や思い込みが危ないということかな。

幸子 不正に備えて補償制度があるキャッシュレス決済は多い。万が一、被害にあったら早めに補償を申し出ることね。国は25年までにキャッシュレス決済比率を40%まで高める目標を掲げている。キャッシュレス決済は増える見通しで、これに便乗した不正も簡単になくならないわ。使うか、使わないかは最終的には個人の判断だけど、「使わないから、何も知らなくていい」というわけではないことは覚えておいた方がいいと思う。

現金大国、今後は変化も


大和総研主任研究員 長内智さん
 日本は現金決済がとても便利な社会です。至る所にATMがあり、店でのお釣りの計算などもスムーズです。ただ、現金には配送・警備などで多大なコストがかかり、日本が今後も「現金大国」であり続けられるかは不透明です。将来にわたり、快適な暮らしを続けるには一定のキャッシュレス化は避けられないでしょう。
 決済をすべてキャッシュレスにする必要はありません。現金と併用してこそ意味があります。例えば、災害時は停電などでキャッシュレス決済できないという批判があります。もっともな意見ですが、緊急時に多額の現金を抱えていては焼失や盗難の危険が高まります。復旧まで短期の買い物ができる分だけ現金を持ち、残りはキャッシュレス化するといった合理的バランスを考えれば、利便性と安全性を両立できます。(聞き手は堀大介)

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