バフェットが買う素晴らしい企業 その3つの条件とは - 日本経済新聞
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バフェットが買う素晴らしい企業 その3つの条件とは

ろくすけさんの勝てる株式投資入門(10)

株式投資で3億円を超える資産を築き、アーリーリタイアしたブロガーのろくすけさん(ハンドルネーム)。会社員投資家の夢を実現した実在のスゴ腕投資家が、会話形式のフィクションストーリーを通して、株式投資の取り組み方やノウハウをやさしく解説していきます。

●ろくすけ 実在する本連載の著者。人気ブログ「ろくすけの長期投資の旅」を運営(容姿は本人と変えています)。
●ゴロー 大学院を修了後、化学メーカーに就職して1年目の青年。旅先で出会ったろくすけさんに師事するという設定。
●ナナコ ゴローの妹。大学で経営学を専攻している。兄と一緒にろくすけさんに株式投資の基本を学ぶという役どころ。

PER(株価収益率)の水準を決める要素について前回ろくすけさんから教わったゴローとナナコ。今回は、収益性の高い企業の見抜き方を学んでいきます。

ゴロー 企業の利益がぶれにくく、かつ利益の成長性が高いとPERは高くなり、逆の場合には低くなる。PERの水準は企業利益の安定性や成長性に応じて大きく異なるから、PERの数値だけで株価が割安かどうかを単純に判定するのは禁物というわけですね。

ろくすけ その通り。前に紹介した米著名投資家のウォーレン・バフェットはこう語っている。「まずまずの企業を素晴らしい価格で買うよりも、素晴らしい企業をまずまずの価格で買うことのほうが、はるかによい」(ロバート・P・マイルズ著『バフェット投資の王道』ダイヤモンド社)と。

素晴らしい企業の株には相応の価格がつく。素晴らしい企業の株を、すごく割安でなくてもまずまずの価格で買えれば十分なんだ。では、バフェットの言う「素晴らしい企業」とはどんな企業なのか、これまで話してきたことを踏まえてポイントを3つ挙げよう。

ポイント1 業績が安定して成長する

ろくすけ 1つ目は、業績が安定性を保ちながら成長していくことだ。「安定性」が肝で、景気が良い時も悪い時も売り上げや利益のぶれが小さくて、増加基調で推移していることが望ましい。前に見た家具・インテリア専門店チェーンのニトリホールディングスはその典型だ。消費増税のインパクトからの回復は早く、コロナ禍に至ってはむしろプラスに働き、増収増益を続けている。

ナナコ企業の資金が事業や投資によっていくら増減したかを示すキャッシュフロー(CF)を基に事業の現在価値を算定するDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)。その計算式に照らして考えると、次のようになりますね。業績がぶれずに安定しているから、期待収益率が低くなる。さらに成長性が高く増収増益が続いているから、永久成長率が高くなる。

ろくすけ 教えたことをしっかりと理解しているね。実際にこういう企業の株は安心して持てる。時々の相場につられて上下に動いても、「いずれは事業価値に見合った水準に向かう」と思えるからだ。

ポイント2 少ない投資でたくさん稼ぐ

ろくすけ 次に2つ目のポイントを示そう。それは事業を拡大して業績を伸ばすために必要な投資が少ないことだ。少ない投資で大きな収益を上げるから、事業投資の効率が高いことになる。事業投資の効率が高いかどうかを判断するには、企業の営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)と投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)のバランスの推移をチェックすることが必要だ。

営業CFは、企業の本業における収入から支出を差し引いたものだ。本業で利益を上げている企業は、営業CFがプラスになる。

一方、投資CFは設備や株などの購入額から売却額を差し引いたもの。設備や株などの購入額の方が多いと、社外に出るお金が多くなるので、投資CFはマイナスになる。成長企業は設備などへの投資が多いから、投資CFはマイナスになる傾向がある。

ゴロー 2つのCFのバランスはどんな状態がいいのでしょう?

ろくすけ 営業CFのプラスの額に対して、投資CFのマイナスの額が小さい状態だ。そうなると、投資の効率が高いことになる。

ナナコ 大学の授業では、営業CFと投資CFを足し合わせたものをフリーキャッシュフロー(FCF)と呼ぶと教わりました。このFCFがプラスだと投資効率が高いことになるわけですね。FCFが大きい企業は、手元にどんどんお金がたまっていきます。

ろくすけ 企業が社会に対して価値のある商品やサービスを提供していると、投資に対して得られるリターンが大きくなる。だから企業の内部にお金がたまる。名称からも分かるように、FCFは企業が自由に使えるお金だ。それが大きいことは企業に有利に働く。

ここで下に掲げたグラフを見てほしい。これは、作業服販売店チェーンを展開するワークマンのCFの推移を示すものだ。ワークマンは、一般向けのアウトドアやスポーツ用の衣料を扱う新業態「ワークマンプラス」がヒットして躍進している。

ナナコ ワークマンのだぼだぼヤッケを持っています。横浜にオープンしたばかりの女性向けストア「#ワークマン女子」の1号店にも行ってきましたよ。あっ、2016年3月期と17年3月期はFCFがマイナスになっています!

ろくすけ よく気が付いたね。ワークマンはこの間に、新業態などの取扱商品拡大に対応するため、43億円かけて新たな物流施設を建設したんだ。お金がたまる体質だと、いざという時に思い切った投資を実行して、成長を加速させられる。プラスで推移していたFCFが一時的にマイナスになると、その裏には成長を加速させる大規模投資があることが多い。このパターンを覚えておくといい。

ゴロー 僕が勤める化学メーカーは、大きな工場設備を必要とします。ですから投資CFは膨らみます。化学メーカーは有望株にはなりにくいのでしょうか。

ろくすけ 確かに業種や業態による違いは大きい。でも、化学メーカーの中にも、信越化学工業のように設備投資を積極的に行いながら、恒常的にFCFを生み出している企業もある。それは、塩化ビニール樹脂やシリコンウエハーなどの得意分野に経営資源を集中し、緻密に顧客のニーズを吸い上げながら適切なタイミングで設備投資を行っているからだ。投資の規模が大きいこと自体は問題ではない。あくまで投資CFと営業CFの長期的なバランス、すなわち投資効率が優れているかどうかを見るべきだ。

ナナコ 大事なのは、「コスパ」のいい投資ができているかですね!

ポイント3 堅固な「堀」に守られている

ろくすけ その通り。そして最後の3つ目のポイントは、企業が堅固な競争優位性を持って参入障壁を築いていること。言い換えれば、「堀」で守られていることだ。

ゴロー 堀って、お城の堀ですか?

ろくすけ 城が堀で囲まれ、それが広いほど、相手は攻略しにくいだろう? それと同じで、「あの企業と戦っても到底勝てない」と競争相手が諦めるくらいの競争優位性を持つことを意味する。

実はこの堀で守られているか否かが、先ほど話したポイントの1つ目と2つ目をも大きく左右する。次回は、企業が堀を持てるようになる要素について説明しよう。

(次回に続く)

今回のまとめ
3つの条件を満たす優良企業の株をまずまずの価格で買う

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