翔猿、大関の心理読み切る 殊勲のはたき込み
「全勝の大関だったので、一発食ってやろう」。その野心を成就させた翔猿の表情は気迫に満ち満ちていた。先場所、ダークホースとして場所を沸かせた男が一人大関に土をつけ、波乱を巻き起こした。

- 【関連記事】
貴景勝は今場所、鋭い出足で立ち合いから相手を圧倒していた。それがこの日は違っていた。土俵下の錦戸審判長(元関脇水戸泉)は「立ち合いで踏み込めていない。踏み込んで突き放せばいいのに見ちゃっている」と指摘する。白星が伸びていない小兵が何をしてくるかわからず、慎重になりすぎたのだろう。
翔猿は大関の心理を見抜いていた。「変化を読んでいるだろう」。案の定、相手の出足は鈍い。まっすぐ当たって互角の押し合いに持ち込み、相手の上体が浮いた瞬間にはたき込んで一丁上がり。「夢みたいだ」と声を上ずらせた。
新入幕だった先場所は11勝で優勝争いに絡み、敢闘賞と大活躍。だが、自己最高位の西前頭4枚目で挑む今場所はここまで3勝6敗と苦戦する。注目も増えて重圧もあるのだろうか、「全然体は動かないですけど、ここから切り替えていきたい」。巻き返しを期す小兵の番狂わせで、後半戦の土俵がさらに混沌としてきた。(田原悠太郎)