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中学の定期テスト改革 ノート持ち込み可、暗記減らす

福岡県の須恵町立須恵中学校は定期テストにノートの持ち込みを認めている

「ノート持ち込み可」「試験そのものを廃止」――。全国の公立中学校で定期テストのあり方を見直す動きが広がっている。思考力などを重視した大学入試改革に対応するため、一夜漬けで知識を詰め込む従来型のテストを改め、生徒が主体的に学ぶ力を引き出す狙いがある。

9月上旬、福岡県の須恵町立須恵中学校で行われた定期テスト。真剣な表情で解答用紙に向かう生徒の机に、カラフルな付箋が貼られたノートが並んでいた。中には10冊ほどを机に積み上げる生徒もおり、ノートと問題を交互に見つめながら鉛筆を走らせていた。

同校は2019年度から定期テストを年4回から2回に減らし、家庭学習で使う「自学ノート」の持ち込みを認めている。何冊でも可能だが、手書きであることが条件。生徒は自宅で毎日1ページ以上学習し、教員に提出する決まりだ。

テストはノートを持ち込める分、問題数を増やして記述式中心にし暗記問題を減らした。国語には「物語のキャッチコピーをつけ、理由を説明せよ」といった出題もあり、ノートを見ただけでは解けない問題も多い。テスト改革に携わった原結花教諭は「大学入試改革で思考力を問われる問題が増えた。生徒には自分で考える力を身につけてほしい」と期待する。

テストを見直した結果、家庭学習に取り組む生徒の姿勢も変わってきた。高得点を狙うには単純に単語を書き込んだだけのノートは役に立たず、質を高める必要がある。2年の佐伯英彦さん(13)は「しっかり勉強しないと点数が取れない。工夫してノートを整理することで知識も頭に入りやすくなった」と手応えを語る。

定期テストを廃止した学校もある。金沢市立西南部中学校は19年度から年5回あった中間・期末テストをやめた。代わりに導入したのが週2回程度、1回20分ほどの「単元テスト」。単元ごとに試験をすることで生徒の理解度をこまめに確認できるという。

出題範囲が広い定期テストではヤマを張って対策を練る生徒も目立った。主導した高島栄治校長は「従来の定期テストは一夜漬けを助長し、本当の学びにつながらない。試験のためでなく、生涯の力になる学びを身につけてほしかった」と振り返る。ただ当初は保護者から「テストがなくなったら、子どもが勉強しなくなる」と不安の声も上がった。

改革から1年。最近は積極的に教師に質問したり、放課後に校内で自習したりする生徒の姿が見られるようになり、保護者の理解も高まった。今春の卒業生の公立高校合格率は85%で前年から9ポイント上がった。今年は新型コロナウイルスの影響で長期休校となったが「自分で計画を立てて勉強する習慣をつけてきたのでうまく乗り越えられたのでは」と高島校長は話す。

東京都の千代田区立麹町中学校も18年度から定期テストを単元ごとのテストに切り替え、希望者が再テストを1度受けられる仕組みを導入した。

文部科学省によると、定期テストは学習指導要領に規定がなく、運用は学校の判断に委ねられている。ただ進学などで参考にされる通知表の評価をつけるため、多くの学校が採用している。

定期テストが見直される背景について、福岡教育大の鈴木邦治教授(教育経営学)は「テスト結果ではなく、学びの質を重視する教育への転換が進んでいる」と説明。「AI(人工知能)社会になれば自分で課題を見つけ出し、解決していく力がより求められる。テストを見直すことは非常に効果的だ」と話している。(大城夏希)

海外は論理的説明、体験重視


 文部科学省によると、欧米では日本のように定期テストがある国は少ない。フランスには一律の定期テストがなく、大学入学資格試験バカロレアが記述式のため、高校生は解答に至る考えを論理的に説明する訓練を重ねているという。
 2学期制の韓国の中学校は2016年度から3年間のうち任意の1学期間を「自由学期」とし、期間中のテストをなくす取り組みを始めた。テストがない分、体験型学習など幅広い教育の機会を取り入れられる利点がある。
 同省調査企画課の担当者は「試験のために知識を詰め込む学習は生徒の負担が大きいとされ、人間性を豊かにする教育が求められている」と話す。千代田区立麹町中学校の工藤勇一前校長は「暗記したことを解答用紙に書く知識偏重型の日本のテストのあり方は国際社会では通用しない」と指摘する。

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