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巨額契約がもたらす莫大な恩恵 NBA12月開幕

スポーツライター 杉浦大介

10月11日に閉幕を迎えたばかりの米プロバスケットボールNBAの来シーズンが、年内に早くも開幕する。そんなニュースを聞いて驚いたスポーツファンは多かっただろう。

11月9日、NBAとNBA選手会は2020~21年シーズンを12月22日に開幕することで合意したと発表。試合数は従来の82試合から10戦減って72試合制になる。Elias Sportsによると、シーズンの間のオフがわずか71日というのは米メジャースポーツ史上で最短という。

10月11日に閉幕を迎えたばかりのNBAは早くも12月に開幕を迎える=AP

9月22日、CNNのインタビューに応じた際、アダム・シルバー・コミッショナーは「来季開幕は早くても(21年の)1月になるだろう」と述べていた。その時点では、来年1月18日のマーティン・ルーサー・キング・ジュニア・デイの開幕が有力と目されたのだった。

ところが――。結果的にその日程が1カ月弱も前倒しになった理由はどこにあるのかといえば、年内の開幕がビジネス面でNBAに莫大な恩恵をもたらすからに他ならない。

NBAはABC/ESPN、TNTと24~25年シーズンまでの9年間で総額240億ドル(約2兆5000億円)という巨額契約を結んでおり、12月に開幕すればこの重要なTVパートナーに貴重なコンテンツを提供することが可能になる。12月22日にはTNTが恒例の開幕ダブルヘッダーを放映することが確定的。25日にはABC/ESPNが人気チーム同士の5試合を放送し、例年盛大に盛り上がるクリスマスゲームの伝統を守ることができる。

八村ら五輪参加の可能性膨らむ

また、来季を早めに始めておけば、21~22年シーズンの日程を通常通りの10月開幕、6月閉幕に戻すこともより容易になる。さらに東京五輪が予定通りに行われた場合にも日程が被らず、日本の八村塁(ウィザーズ)ら各国の代表選手参加の可能性も膨らむ。

「12月22日に開幕し、クリスマスゲームを通常通りに行い、72試合を7月の東京五輪前に終わらせることによってもたらされるリーグの利益は5億~10億ドルに及ぶと信じられている」

年内開幕が決定的になったあと、ESPN.comはそう報道していた。昨季のNBAは入場料で8億ドル、スポンサー収入などで4億ドルの損失を出し、シーズン総収入が前年比で1割減(83億ドル)だったことを考慮すれば、ここでさらなる収入減を避けるための日程が模索されるのは必然だったのだろう。

近いうちに多くのチームに観客動員の準備が整うのであれば、開幕を遅らせる意味はあったのかもしれない。しかし、新型コロナウイルスのワクチン、治療薬の導入は依然として不透明。来季中にどれだけのチームがフルかそれに近い割合で客入れできるようになるかはわからないのだとすれば、まずはテレビ契約を守ろうとするのは理解できる方向性ではある。

こうして先を急いだ結果として、11月18日のドラフト、FA(フリーエージェント)交渉解禁から約1カ月の間に、各チームはFA戦線、トレーニングキャンプ、プレシーズン戦をこなして準備を整えることになる。チームづくりを担当するフロントにかかる負担は計り知れない。特に10月までフロリダ州オーランドで続いたプレーオフに出場したチームは休む間もなく、厳しい調整を余儀なくされる。一部の選手たちが不満を持っていることは容易に想像できる。

ただ、新型コロナのパンデミックによる減収の影響を受けるのは選手も同様だ。右肩上がりだったNBAのサラリーキャップ(総年俸の上限)も20~21年シーズンは昨季と同じ1億914万ドルで据え置きとなり、この停滞は選手のサラリーに直接響いてくる。そんな状況下では、選手会も年内開幕に同意せざるを得なかった。

先を読むのが難しいシーズン

NBAのゲームがすぐにまた見られるファンはうれしいはずだが、そのクオリティーが気になるところではある。昨季優勝したロサンゼルス・レイカーズのレブロン・ジェームズ、アンソニー・デイビスなど、疲労を残したスター選手たちは例年より欠場するゲームも増えるのではないか。そうなると、上位争いも混沌としかねない。

終わりが見えないパンデミックの中で、オーランドの"バブル(隔離空間)"が話題になった昨季に続き、来季も先を読むのが難しいシーズンとなることは間違いなさそうだ。

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