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米次期財務長官は重責 税・銀行改革、イエレン氏浮上

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン前議長=ロイター

【ワシントン=河浪武史】米大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン前副大統領は、政権人事を急ぐ。焦点は次期財務長官で、新型コロナウイルス対策や税財政改革、銀行改革といったバイデン政権の主要政策を一手に担う。長官候補には米連邦準備理事会(FRB)のイエレン前議長まで浮上してきた。

バイデン氏は26日の感謝祭前に、数人の閣僚候補を指名する考えを表明している。次期財務長官の候補としては、オバマ前政権で財務次官(国際担当)を務めたブレイナードFRB理事のほか、アフリカ系米国人のファーガソンFRB元副議長らも挙がっている。

次期財務長官は重責だ。主要人事の承認権がある上院(定数100議席)は共和党が50議席を固め、2021年1月に決選投票となった残る2議席のうち1つをとれば、同党が多数党となる。下院は民主党が多数派を維持したが、新議会でも「ねじれ」が続けば、財務長官は予算問題などで上下両院の調整役を果たす必要がある。

米メディアは次期財務長官人事を巡り、FRB議長を14年から4年間務めたイエレン氏の起用案を報じ始めた。財務長官に大物を指名すれば税財政改革などの協議で議会を主導できるためだ。イエレン氏は金融政策だけでなく雇用問題の専門家であり、炭素税の導入を主張するなど環境対策にも明るい。選挙期間中、バイデン氏が経済格差問題などでイエレン氏に助言を求めていたことも明らかになっている。

バイデン氏は1月の政権発足後、追加の新型コロナ対策を早急にまとめたい考えを表明しており、次期財務長官の手腕が早々に試される。バイデン氏は失業給付の積み増しなどを検討するが、共和党は過大な支給に強く反対している。4年で2兆ドルという巨額の環境インフラ投資を公約し、財源として企業・富裕層への増税も主張。共和党は増税には徹底して反対するとみられ、バイデン氏の投資構想の実現には財源の捻出も欠かせない。

次期財務長官は、銀行規制改革も主導する必要がある。民主党は銀行事業と証券事業を分離する現代版の「グラス・スティーガル法」を公約するが、共和党が上院で過半数を取れば実現は困難だ。そのため、バイデン体制は目玉政策として、経済格差の是正に照準を絞った銀行システム改革に乗り出す可能性がある。

民主党は政権綱領で「FRBによる銀行口座の提供」を検討するとも表明している。米家計は5.4%(約710万世帯)が銀行口座を保有しない。コロナ対策で大人1人に1200ドルを支給する現金給付策を発動したが、銀行口座を持たない低所得層はすぐに資金を得られなかった。民主党は「国民皆口座」の実現を主張し、同党内にはFRBではなく郵便公社(USPS)に銀行口座を供給させる案もある。

FRBが家計に銀行口座を提供すれば「デジタルドル」の発行も容易になる。FRBではブレイナード氏がデジタル通貨政策や低所得層対策を主導しており、次期財務長官の有力候補とされる要因だ。アフリカ系米国人のファーガソン氏も格差問題の解消役として次期長官候補に挙がる。

クリントン政権で財務長官を務めたサマーズ米ハーバード大教授は、次期長官の責務として「国際協調の再構築」を挙げる。トランプ政権は強硬的な貿易政策などで各国と対立。新型コロナ渦は中低所得国の通貨危機に発展する懸念があり、財務・金融当局の強い連携が必要になる。サマーズ氏は「次期長官は強いドルを支持することが賢明だ」とも指摘する。

手厳しいウォール街批判で知られるウォーレン上院議員も、財務長官候補の一角に挙げられてきた。ただ、共和党が上院で過半数を確保すれば、急進左派の代表格である同氏の人事承認は極めて難しくなる。イエレン氏らはそれぞれFRB高官に就任する際、議会承認を経験しており、バイデン体制で財務長官に指名されても上院を通過しやすい側面もある。

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